研究課題
生物に普遍的なRNA認識機構として、Dicer-siRNA系、自然免疫のパターン認識系がある。これらの機構は従来の獲得免疫系とは独立に種を越えて抗ウイルスの防御に働く。自然免疫系のパターン認識系はtype I interferon (IFN) の産生に連結し、強力な免疫応答を誘起する。しかし、ウイルス感染はこれらの防御系を越えて成立し続ける。本研究ではヒトで失われたウイルス検知系と応答系を下等動物の系で同定し、新興感染の対策に資することを目指す。サカナの自然免疫ゲノム情報から,ユニークなウイルスdsRNA認識機構(TLRとRIG-I系)とtype I インターフェロン(IFN)誘導系の起源を探索する。TLR3とTLR22 についてヤツメウナギ(無顎類)、ナメクジウオ(脊索動物)、無脊椎動物(ウニ)のゲノム情報から構造的orthologs をcDNAクローニングした。ヤツメウナギTLR3, TLR22はメダカ細胞に発現させるとpolyI:C刺激でサカナIFNを誘導した。これに対し、ウニTLR3 orthologは同様の系でIFNを誘導しなかった。ウニTLR22のorthologは同定できなかった。サカナIg-TIR(TIRをもつが細胞外ドメインはIgドメイン)がIFN誘導に関与するかをヒト細胞(HEK293)で検討したが、ヒト細胞でIFN誘導が確認できなかった。メダカ細胞には本系のIFN誘導経路が備わっていない可能性もあり、まだ検討の余地がある。
2: おおむね順調に進展している
計画を実行したがTLR3以外は予定通りの結果にならず悩んでいる。TLR3についてはサカナ、ヤツメウナギ、のTLR3はIFN誘導に関して互換性があり、TLRがIFN誘導系と連携したのは5億年以上前であることが示唆された。しかし、ウニTLR3 構造orthologは少なくともヒト、メダカ細胞ではIFN誘導に機能せず、別な生体防御系都の連動が示唆された。発生との関連も昆虫型Toll で示唆されている。サカナIg-TIRの機能は今後別な系を作成して検討する余地がある。RIG-I経路などは次年度にまとめて提出する予定である。以上の一部はDCIに報告した(2011)。
IFN誘導経路は内因性のRIG-I 経路がある。その系統発生の位置づけも次年度検討する。Ig-TIRは今後サカナの機能解析系を作成できるか検討する。ウニの哺乳類型TLRはクローニングしたので引き続き活性を解析する。大きい問題の1つはウニやナメクジウオ、ヤツメウナギには細胞培養系がないことで、primary culture か培養系を開発する必要があるかもしれない。仮説の検証にもう1年を費やしてみる。フグTLR22 tgマウスは作成したので次年度はその解析も予定通り進める。
24年度に予定していた論文関連、研究成果発表の費用が未使用額として発生した。25年度においては、論文投稿費用、研究成果発表のための国内学会参加費、旅費及び宿泊に使用する。
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Proc Natl Acad Sci USA
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