研究課題
高齢者を中心に患者数が百万人にも及ぶ慢性関節リウマチ等の自己免疫疾患は免疫制御能の低下によるものであり,QOLを著しく低下させる。よって免疫制御能の低下を回復させる手段と予防法に関する研究成果が待望される。我々は自己免疫性糸球体腎炎においてマウスB1細胞の機能亢進により自然抗体とその中のいくつかの特異性を有する自己抗体の産生が上昇することを解明した。さらに最近,ヒト自然抗体由来のポリクローナルIgGを培養マウスB1細胞に添加すると,細胞表面上に容易に結合し,細胞内に取り込まれてトル様受容体TLR9のシグナルを阻害することを発見した。我々はヒト自然抗体が潜在的に有するB1細胞制御活性の実体を探索し,その機構を同定し,炎症を抑える新規方法ならびに発症前診断を可能とする方法を開発することを目的として以下の研究を開始した。平成24年度はまずヒト末梢血中のB細胞画分に,最近Griffinらにより同定されたCD20+CD27+CD43+CD70-B1細胞がどの程度存在し,memory B細胞などと明確な機能的差異が見出せるか否かを検討することを計画した。またヒトγグロブリン製剤から調製した種々のIgG分画をB1細胞に添加して応答性を評価することを計画した。その結果,ヒト末梢血中B細胞画分に,CD20+CD27+CD43+CD70-で定義されるB細胞サブセットが5%弱,存在することが明確となった。さらにmemory B細胞との表面抗原の発現パターンを比較したところ,とりわけCD5などの抑制系受容体の発現がB1細胞様のサブセットで高めになっていることが分かった。IVIgに対する応答も現在検討している。
2: おおむね順調に進展している
計画どおりヒト末梢血中のB1細胞画分と考えられる集団を同定することができ,これに対するIVIgの作用を検討する準備が整ったため。これに加え,当初計画にはなかった予想外の成果が得られつつある。つまりヒト末梢血中B細胞画分に,CD20+CD27+CD43+CD70-で定義されるB細胞サブセットがわずかに存在することが明確になったことに加え,プラズマブラストとの関連を平行して進めており,自己免疫疾患患者と健常人のメモリーB,プラズマブラスト,B1細胞の集団がそれぞれマーカーが酷似しながらもそれぞれの機能的な相違が存在することが窺えるデータが得られつつある。
当初の計画どおり平成25年度はB細胞のみならず単球や血小板に対するIVIgの作用をヒト末梢血試料を用いて進める予定である。当初計画にはなかったが,B1細胞サブセットがわずかに存在することが明確になったことに加え,プラズマブラストとの関連,自己免疫疾患患者と健常人の各サブセットのサイズと機能的相違について明確にし,IVIgへの応答性の異同についてもデータを得る予定である。これらについては共同研究者である大学病院医師・研究者との密接な連携を更に強固にして推進する。
該当なし
すべて 2012 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
Open J. lmmunol
巻: 2(4) ページ: 149-160
10.4236/oji.2012.24019
J. lmmunol
巻: 189 ページ: 5903-11
10.4049/jimmunol.1201940
Blood
巻: 120 ページ: 3256-9
10.1182/blood-2012-03-419093
Human Immunol.
巻: 74 ページ: 433-8
10.1016/j.humimm.2012.11.060.
巻: vol. 120 ページ: pp.1647-57
10.1182/blood-2012-02-410803
J. Immunol.
巻: vol. 188 ページ: pp.5408-5420
10.4049/jimmunol.1102991
http://www2.idac.tohoku.ac.jp/dep/expimmu/