研究課題
挑戦的萌芽研究
本研究においては、これまでに研究代表者が独自に樹立したマスト細胞特異的抗体ライブラリを駆使したマスト細胞サブセットの解析を進めている。本事業の初年度に当たるH24年度の研究から、腸管のマスト細胞上に細胞外ATP受容体の一つであるP2X7が高レベルで発現していることが判明した。またP2X7を阻害する1F11抗体で処理することでマスト細胞のATP依存的な活性化が抑制出来ること、また炎症性腸疾患モデルにおいて治療効果が得られることが明らかとなった。そこで各組織に存在するマスト細胞上のP2X7の発現を比較したところ、腸管のマスト細胞や骨髄由来マスト細胞が高レベルでP2X7を発現しているのに対し、皮膚のマスト細胞はP2X7の発現が低いことが判明した。またこの細胞表面でのP2X7の発現レベルは遺伝子レベルでの発現量と相関していたことから、転写レベルで発現制御が行われていることが示された。さらに細胞外ATPに対する反応もP2X7の発現レベルに相関し、皮膚マスト細胞は細胞外ATPへの反応性がほとんど認められなかった。一方、ヒト組織サンプルを用いた解析から、健常人の腸管に存在するマスト細胞はP2X7を発現していないのに対し、炎症性腸疾患の一つであるクローン病の患者の大腸組織においてはマスト細胞上のP2X7の発現が誘導されていることが判明した。これらの結果は、ヒト、ならびにマウスにおいてP2X7の発現を指標にマスト細胞の分類が可能であり、その発現が炎症性疾患の病態形成と関連していることを示唆するものであり、今後P2X7の発現制御メカニズムという観点からのマスト細胞サブセットの分類と機能制御に関する研究が重要であると考える。
2: おおむね順調に進展している
初年度の研究においては、研究代表者が樹立したマスト細胞特異的抗体ライブラリを駆使し、そのうちの一つであるP2X7を認識する1F11抗体を用い、各組織におけるマスト細胞上のP2X7分子の発現レベルが異なることを示すことに成功した。さらに同じ腸管組織のマスト細胞であっても、ヒトの腸管ではP2X7が発現していないのがデフォルトとなっており、炎症性疾患の一つであるクローン病の患者においては発現が誘導されることが示された。これらの結果は、同じマスト細胞であっても環境や組織の免疫状態により機能が変化すること、その一つがP2X7分子であることを示す結果であり、本事業の目的にあった結果が得られつつあることを示している。
現在の研究は当初の予定通りに進んでいることから、引き続き計画に従い推進する。特に皮膚と腸管組織においてマスト細胞上のP2X7の発現が異なるという知見を発展させ、その制御メカニズムの解明を進める。
当初の予定通り研究費の多くは消耗品として使用するが、それ以外に国内での研究打ち合わせのための旅費や英文校正などの謝金に使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 10件) 学会発表 (11件) (うち招待講演 11件) 図書 (3件)
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