研究課題
本研究においては、これまでに研究代表者が独自に樹立したマスト細胞特異的抗体ライブラリを駆使したマスト細胞サブセットの解析を進めている。本事業の2年目であるH25年度の研究においては、初年度に得られた①細胞外ATP受容体の一つであるP2X7が腸管のマスト細胞に高レベルで発現し、ATP依存的に活性化されること、②ATP-P2X7-マスト細胞の相互作用は炎症性腸疾患の発症因子となっていること、③皮膚のマスト細胞においてはP2X7の発現が低いこと、といった知見をもとに、皮膚マスト細胞のP2X7発現制御メカニズムの解明を進めた。その結果、皮膚マスト細胞上のP2X7は、細胞が本来内在的に有しているメカニズムにより発現低下しているのではなく、皮膚環境の関与により変化していることが判明した。さらにその機能は皮膚の繊維芽細胞により担われていること、またその制御を行う上で重要な因子としてレチノイン酸分解酵素であるCyb26b1を同定した。これらの知見を発展させた研究から、レチノイン酸はマスト細胞上のP2X7を誘導する因子であり、皮膚においては繊維芽細胞がその分解を担うことで、P2X7の発現が抑制されることが判明した。今後は、皮膚疾患との関連も含め基礎と臨床の両観点からレチノイン酸、ATP、P2X7、マスト細胞のそれぞれの相互相関を明らかにすることが重要であると考える。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究においては、研究代表者が独自に樹立したマスト細胞特異的抗体ライブラリを駆使することで得られた知見を発展させ、皮膚と腸管のマスト細胞の機能的差異を明らかにする研究を進めている。これまでの検討から、同じマスト細胞であっても生体環境により機能が変化すること、特に炎症性疾患の発症因子の一つであるP2X7の発現が非免疫系細胞である繊維芽細胞によって制御されており、その介在分子がレチノイン酸であることを見いだした。これらの知見は、皮膚環境におけるマスト細胞の活性化制御機能を世界で初めて明らかにしたものであり、本事業の目的にあった優れた結果が得られつつあることを示している。
現在の研究は当初の予定通りに進んでいることから、引き続き計画に従い推進する。レチノイン酸による皮膚マスト細胞上のP2X7の発現制御と免疫疾患との関連について解明を進める。
当初の予定に従い研究を進めた結果、標的分子候補を同定することが出来たが、病態形成との関連を明らかにするための関連遺伝子欠損マウスの導入と繁殖を進めていたが、予想していたよりも産仔数が少なく、必要数のマウスが確保できなかったため。当初の予定通り研究費の全ては消耗品として使用する。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (14件) (うち招待講演 14件) 図書 (1件)
Front in Immunol
巻: 4 ページ: 189
doi: 10.3389/fimmu.2013.00189
Curr Topics Pharmacol
巻: 17 ページ: 13-23
J Gastroenterol Hepatol
巻: 28 ページ: 18-24
doi: 10.1111/jgh.12259
J Immunol
巻: 191(2) ページ: 942-8
doi: 10.4049/jimmunol.1200636
Nat Commun
巻: 4 ページ: 4:1772
doi: 10.1038/ncomms2718