研究課題/領域番号 |
24659218
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
名川 文清 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (10241233)
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研究分担者 |
高橋 宜聖 国立感染症研究所, 免疫部, 室長 (60311403)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | VLR |
研究概要 |
獲得免疫系は、外界から侵入してくる病原体を特異的に認識・排除するために脊椎動物が持つ高度なシステムであり、ゲノム再編成により多様化される抗原受容体が重要な役割りを果たしている。軟骨魚類からヒトに至るまでの生物は、イムノグロブリン(Ig)型の抗原受容体の遺伝子をV(D)J 組み換えにより再編成し、多様な抗原受容体を創り出している。一方、軟骨魚類より下等なヤツメウナギやヌタウナギなどの無顎類では、leucine rich repeat(LRR)からなる抗原受容体variable lymphocyte receptor (VLR)の遺伝子を、V(D)J 組み換えとは全く異なるゲノム再編成システムによって多様化している。本研究課題では、現在のところ不明の点の多いVLR抗原受容体遺伝子系について、遺伝子再編成システムを解析し、免疫系における自己識別をその起源と進化の観点から解明することを目指す。ヤツメウナギに関しては、P. marinousゲノムの配列が明らかにされているが、ヌタウナギに関しては、数種のgermline LRRセグメントの配列しか明らかになっていない。今年度は、次世代シーケンサー解析により得られた多数のgermline LRRセグメントの配列を解析した。その結果、一部のgermline LRRセグメントが2種類のVLR遺伝子(VLRAとVLRB)のいずれにも利用されていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
次世代シーケンサー解析により得られた配列情報が多く、解析に時間がかかった。
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今後の研究の推進方策 |
(i)ヤツメウナギにおいて、VLRA+リンパ球はエラの先端で、及びVLRB+リンパ球は腸内縦隆起で産生されていると考えられている。このような1次リンパ組織から未熟なリンパ球を取り出し、これらの中に自己成分に反応するVLRを発現する細胞が実際存在するかどうかを検討する。 (ii)未熟なリンパ球がどの様なVLR遺伝子を持っているのかについて解析する。例えば再編成中間体を持つものが多く存在するか、再編成に失敗した遺伝子を持つ細胞が多く存在するのか、あるいは自己抗原を認識するものが多く存在するのか等について検討し、リンパ球分化の過程で何らかの選別が起こっているかどうかを明らかにする。 (iii) 自己成分に反応するVLRは排除されるのかについて検討する。リンパ細胞の分化の過程で自己反応型のVLRが生じてしまった場合に、このような遺伝子を持つリンパ細胞を排除する仕組みがあるのではないかと予想される。1次リンパ組織と末梢血から分離された成熟リンパ球のVLR遺伝子に違いがあるかどうかを検討する。何らかの選別を受けているのであれば、自己抗原を認識するVLRは未熟なリンパ球には認められるが、成熟リンパ球には存在しないと予想される。 (iii) マウスやヒトでは、V(D)J組み換えによって出来上がった抗原受容体に問題があった場合、例えば自己成分に反応した場合、もう一度組み換えを起こして、可変領域を変化させるreceptor editingと呼ばれる現象が知られている。無顎類においても同様の現象があるかどうかを検討する。1次リンパ組織や末梢血から多数のリンパ球を分離し、それらのVLR遺伝子の構造を調べ、遺伝子再編成が終了した後にeditingを受け、可変領域が変化したVLR遺伝子が実際存在するかどうかについて検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に使用する予定の研究費は、本年度塩基配列解析に時間がかかったために実施できなかった以下の項目について使用する。 (i)ヤツメウナギにおいて、VLRA+リンパ球はエラの先端で、及びVLRB+リンパ球は腸内縦隆起で産生されていると考えられている。このような1次リンパ組織から未熟なリンパ球を取り出し、これらの中に自己成分に反応するVLRを発現する細胞が実際存在するかどうかを検討する。
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