研究課題/領域番号 |
24659226
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
善本 知広 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (60241171)
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研究分担者 |
西崎 知之 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (00221474)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | IL-33 / アルツハイマー病 / 学習・記憶 |
研究概要 |
1 脳内IL-33の産生細胞と産生機序の研究 (1) 正常マウスの加齢に伴う脳内IL-33の発現及びその局在を検討した。実験では8、16、24、32、40、48、56、64週令のマウスの脳切片組織をIL-33特異的抗体にて免疫染色を行なった。その結果、8週令の若年マウスではIL-33発現が認められないが、16週令からIL-33発現を認め、以後加齢とともにその発現が増強した。一方、(2) IL-33欠損マウス脳ではIL-33発現細胞は認められないことから、当該免疫染色はIL-33特異的であることが確認された。次に、(3) 正常マウス脳からミクログリアを分離した後、これをLPSにて刺激培養後、上清中のIL-33産生をELISAにて測定した。既に報告されている論文結果と異なり、ミクログリアからのIL-33産生は認められなかった。 2 IL-33の脳電気生理学的影響の研究 IL-33の脳神経系に対する役割を検討する目的で、学習・記憶の細胞モデルである海馬シナプス増強現象を正常マウスとIL-33欠損マウスを用いて検討した。その結果、IL-33欠損マウスでは海馬シナプス増強現象が正常マウスに比較して著明に低下していることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度実験計画で当初予定していた脳内IL-33発現の確認と、加齢に伴うIL-33発現動態は十分な研究結果が得られた。しかし、脳内IL-33発現細胞がアストロサイト細胞(中枢神経系の上皮細胞に相当)であるか否かの確認まで、至っていない。アストロサイト細胞特異的抗体抗GFAP抗体による免疫染色法で確認する必要がある。さらに、アルツハイマー病の原因の1つとされている脳内アミロイドβ(Aβ)とIL-33の相互関係の解析が全く行なわれていない。一方、当初研究予定に無かった「IL-33の認知機能に対する生理作用」を平成24年度に実施した。その結果、予想以上の成果が得られ、IL-33は認知機能に重要な因子であることが明らかとなった。しかし、初年度の計画目標は完全には達成されていないことから、研究達成度はやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1. 脳内IL-33の産生細胞を同定する:脳におけるIL-33の局在をマウスIL-33特異的抗体とアストロサイト細胞の細胞表面マーカーである抗GFAP抗体による免疫染色法で確認する。 2. IL-33のAβ産生に対する作用を明らかにする:Aβ産生に対するIL-33の作用をin vivoで検討する目的で、(1) IL-33欠損マウス脳のAβ発現をELISA法と蛍光染色法で検討する。この実験でAβの過度な沈着がIL-33欠損マウスに認められた場合、IL-33によるAβ抑制が証明される。 3. IL-33の脳電気生理学的作用の研究をさらに促進する:初年度は、IL-33欠損マウスでは海馬シナプス増強現象が正常マウスに比較して著明に低下していることを明らかにした。今後、IL-33の作用はその受容体(ST2)とシグナル伝達(MyD88)を介したものかを検討する目的でST2欠損マウスとMyD88欠損マウスを用いて海馬シナプス増強現象を確認する。 4. IL-33欠損マウスの空間認知機能を確認する:IL-33欠損マウスで海馬シナプス増強現象が低下していることから、「IL-33が学習・記憶形成に関与する」可能性が非常に高い。そこで、(1) IL-33欠損マウスを用いたモリス水迷路実験を行う。正常マウスに比較してIL-33欠損マウスでプラットホームへの逃避潜時が延長する場合、学習能力が低下していることが判明する。(2) 同様の実験をST2欠損マウスとMyD88欠損マウスを用いて確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は全て消耗品に使用する。その内訳は、マウス購入費と遺伝子欠損マウスの維持費、及び抗体などの実験試薬に充てられる。モリス水迷路実験では、1群8~10匹のマウスを用いるため、マウス購入費に研究費の大半が使用される。
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