【目的】僻地あるいは在宅療養中の患者が皮膚科医の診療を受けることは難しい。また産休・育休に伴う女性医師の長期離職は医師不足の原因となっている。よって本研究では、僻地・在宅医療の医師と産休・育休等で休職中の女性皮膚科医をつなぐITコンサルトシステムを構築して有用性を実証するとともに、僻地・在宅における皮膚診療の実態を明らかにすることを目的とした。 【方法】アクションリサーチに準じて遠隔皮膚診療ITシステムの開発と評価(女性皮膚科医および僻地・在宅診療医へのフォーカスグループインタビューおよび自記式質問紙法、患者への自記式質問紙法)を行った。僻地・在宅皮膚診療の実態調査は記述研究の手法を用いた。 【結果】都市部の在宅専門診療所と周囲に皮膚科の無い僻地の診療所・病院の3医療機関の医師が皮膚診療に難渋した際、病歴と写真を用いた情報隔離性の高いITシステムで女性皮膚科医にコンサルトできるシステムを開発した。1年間で計29件のコンサルトがあり、その内訳は湿疹・皮膚炎群11件、腫瘍10件、感染症3件、炎症性角化症2件、水疱症1件、紫斑1件、外傷・潰瘍1件であった。自記式質問紙表による調査では患者、在宅・僻地診療医、女性皮膚科医のいずれの満足度も高かった(5点法で平均4.1±0.6)。在宅・僻地診療医へのインタビューから本システム運用による僻地・在宅環境における皮膚診療の向上に有用である可能性が示唆された。女性皮膚科医へのインタビューから、フルタイム勤務が困難な女性皮膚科医の診療能力の維持・向上や復職支援時の教育ツールとしての有用性が示唆された。運用中、利用者からシステムの使い勝手の指摘を受け、システム改善を行った。 【結論】僻地・在宅診療で問題となる皮膚疾患像が明らかになった。機密性が保持されたITを用いた皮膚診療支援システムは、患者、僻地・在宅診療医、休職中の女性皮膚科医にとって有用なツールとなる可能性が示唆された。
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