研究課題/領域番号 |
24659241
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
高村 昇 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (30295068)
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研究分担者 |
林田 直美 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (00420638)
新川 哲子 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (30619482)
高橋 純平 長崎大学, 国際連携研究戦略本部, 助教 (50574026)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | チェルノブイリ / セミパラチンスク / ストレス |
研究概要 |
本研究では、福島第一原子力発電所事故に伴い、長期間の避難を余儀なくされている住民が、今後順次帰宅するのに伴い問題となってくるであろう、「低線量被ばく」を継続することに伴う心理的ストレス、さらにはそれに伴う自律神経系への影響について、調査を行うものである。具体的には、核実験、及び原子力発電所事故によって被害を受けたセミパラチンスク(カザフスタン共和国)、チェルノブイリ周辺地区住民を対象とした心理的ストレス及び自律神経系の評価を、質問紙、さらには最近我々が開発した小型モニタリングチップを用いて解析することで、放射線汚染地域に居住し続けることによる心理的なストレス、及び自律神経系への影響について評価する。具体的には、チェルノブイリ周辺地域(ウクライナ及びベラルーシ共和国)とセミパラチンスク核実験場周辺地区(カザフスタン共和国東カザフスタン州)に居住する住民を対象として、精神的健康度を評価して、対象群との比較を行うと同時に、小型モニタリングチップを用いて自律神経系(交感神経系・副交感神経系)のバランスを評価し、同様に対象群との比較を行うことで、放射能汚染地域に居住することによる精神的健康への影響、及び自律神経系への影響を評価する。東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故に伴う、放射性セシウムによる広範な環境汚染は、現在大きな社会問題となっている。低レベルの放射能が存在する地域に居住することによる心理的なストレスは、今後住民の「安全・安心」という観点から、今後大きな社会的な問題となることが予想される。本調査によって、旧ソ連邦の放射能汚染地域住民における心理的ストレス、及び自律神経系への影響を明らかにできれば、今後の福島における住民への心理的ケアや発電所周辺地域へ住民が帰還する際に特に留意すべきメンタルヘルスにおけるポイントを明らかにすることが期待され、早急な研究の推進が望まれる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すでに、チェルノブイリ周辺地区における一般住民を対象とした調査、チェルノブイリ周辺における若年者を対象とした調査を、周辺地区住民(100名)と年齢・性別をマッチングさせた対照群(100名)を対象として開始しており、基本的属性、GHQ-12、SOC-13に加え、モニタリングチップ装着(24時間)による心電図、被ばく線量、身体活動量、体温のモニタリングを行う。心電図で得られたR-R間隔をパワースペクトル解析によって自律神経系の評価を行っている
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、研究を継続し、心電図結果を用いて心拍間隔変動のパワースペクトル解析を行い、自律神経系の分析を行い。自律神経系の変動の結果、及び他の結果を症例群、対照群において比較・検討を行うとともに、パワースペクトル解析の結果とGHQ-12、SOC-13との関連について統計学的解析を行う。結果が得られた時点で、ウクライナ、カザフスタン共和国の共同研究者を招聘し、結果についての評価、検討を行い、今後の共同研究についての検討を行い、得られた結果をもとに論文の執筆を行うと同時に、福島における住民への心理的ケアや発電所周辺地域へ住民が帰還する際に特に留意すべきメンタルヘルスにおけるポイントを明らかにし、小冊子の形でまとめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究代表者あるいは分担者、大学院生が研究のデータ収集・進捗状況のフォローアップと今後の協議等を目的として現地(ウクライナ及びカザフスタン共和国)を訪問予定である。その際には、現地で日本語を話せる通訳を雇用するものとする。 小型モニタリングチップを用いて研究を行うため、電池等の消耗品や質問用紙(GHQ-12)、また得られたデータの解析を行うために、研究代表者、分担者及び研究を行うウクライナにおいて統計解析ソフトを購入するものとする。 さらに、カザフスタン共和国及びウクライナの研究者2名を招聘して解析結果の検討を行い、論文執筆、今後の研究活動についての打ち合わせを行う。
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