研究課題/領域番号 |
24659242
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
甲斐 由紀子 宮崎大学, 医学部, 教授 (70621803)
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研究分担者 |
林 克裕 宮崎大学, 医学部, 教授 (10136806)
鈴木 斎王 宮崎大学, 医学部, 准教授 (60305084)
小川 泰右 北陸先端科学技術大学院大学, 知識科学研究科, 助教 (60586600)
荒木 賢二 宮崎大学, 医学部, 教授 (70274777)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | リスクマネジメント / 組織学習支援ツール / 人間の特性 |
研究概要 |
本研究の目的は、インシデント事例を活用してリスクマネジメントに関する組織学習スキームを構成し現場実証を通じて実現可能性を検証することである。この目的に向け、以下の3つの副目標「(1)医学部医学科・看護学科の学生と教員による学びのコミュニティの形成と維持プロセスの構成」「(2)インシデントに対するマインドの変容を促し、リスクマネジメントに関連した知識創造に必要な知識・洞察力・表現力を育成する医療リスクマネジメント学習プログラムの開発」「(3)コミュニティにおいて学習プログラムを実施した結果に基づき病院全体の組織的学習に展開する仕組みの構成」の達成を目指す。 本年は、甲斐(医療安全・看護教育学)、林(医学教育学)、荒木・鈴木(医療情報学)、小川(知識科学)による11回のインターネット会議を実施した。会議では、病院や医学部における医療安全教育プログラム及び安全対策の現状を明確にした上で、「水薬過少投与事例」の分析を通し、(1)の形成可能性を検討した。 (2)について、医療者の医療安全マインドに影響を与える手段として、医療安全対策をシステムとして捉えた際、医療者はシステムに受動的に従うのではなく、システムを機能させる上で能動的に活動する必要があることを共有し、医療安全ルールとその記憶のメカニズムを事例とした教材を開発した。 研究の最終ゴールは、医療者の医療安全マインドを高めることである。そのため、本来現場の医療者向けの講習会をデザインするべきであるが、現時点でメタルール教育は医学部のカリキュラムには存在しないこと、更に、卒前教育として行っておくことが有益であると考えた。これらのことから、今回、予備知識として「医療安全の基礎知識」(講義)を受講した医学部医学科1年生に対し、平成25年1月16日、医療安全教育の1コマとしてメタルール教育の講習(90分、109名)をデザインし実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の成果の中心は、前述の(2)を目標とした、医療安全マインドを育む教材を開発することにあり、これは目標(1)のコミュニティを形成する上で、その機会をいかに構成するかという問題への部分的な解であると考えている。教材の開発においては、医療安全ルールとそのルールを運用する医療者の記憶のメカニズムに着目しているが、そこではインシデントの発生原因を、ルールやルールの運用システム及び体制の不備に求めるのみならず、ルールの運用者が人間として当然かかえている認知的特性や価値観にも関連づけている。教材では、この分析結果のみを用いているが、分析自体を医療安全担当でない一般的な医療者や医学・看護学生も分析を行えるように簡略化した手法を構成している。 今後、(1)の学生・教員コミュニティの活動内におけるインシデント分析の利用、更に、(3)の病院レベルのコミュニティの拡大において、どのように利用することが有益であるかを実証的に検討していく。
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今後の研究の推進方策 |
今年度、医学部医学科1年生の教育に試験的に導入した医療安全教材を、大学院生の授業、医療系学会におけるワークショップにおいて実施し、対象者の違いにより医療安全マインドへの影響がどの程度異なるのかについて、学習データ・参与観察データを検証する機会を設ける。 教材の構成と医学部医学科1年生教育の利用結果については、現在論文として成果をまとめており、今後のワークショップにおける成果も、随時論文化を予定する。 今年度の主な研究活動としては、医療安全担当者ではない医療者・医学生がインシデント分析を体験できるツールの開発と、それを用いてインシデント分析を継続的に行う学習コミュニティの形成を目指す。更に、(3)の実現を目指して、医学部医学科・看護学科生と現場の医療者が交流することができる学びの場の形成に向けた調査を進め、ワークショップ形式のプログラムなどの形で具体化を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度の成果である、医療安全マインドを喚起する教材の構成とその試用について、医療系ないしは教育系の学会への論文投稿を予定しており、そのための費用を計上している。また、並行して学会・国際会議の発表を予定しており、それらの費用を計上している。前述の医療系学会における教材を用いたワークショップの実施では、事後に医療安全マインドの変化について継続的な調査を行う予定であり、そのための謝金を計上している。
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