研究課題/領域番号 |
24659242
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
甲斐 由紀子 宮崎大学, 医学部, 教授 (70621803)
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研究分担者 |
林 克裕 宮崎大学, 医学部, 教授 (10136806)
鈴木 斎王 宮崎大学, 医学部, 准教授 (60305084)
小川 泰右 北陸先端科学技術大学院大学, 知識科学研究科, 助教 (60586600)
荒木 賢二 宮崎大学, 医学部, 教授 (70274777)
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キーワード | リスクマネジメント / 組織学習支援ツール / 人間の特性 |
研究概要 |
目的は、インシデント事例を活用してリスクマネジメントに関する組織学習スキームを構成し現場実証を通じて実現可能性を検証することであり、3つの副目標を定めた。 (1)医学部医学科・看護学科学生と教員による学びのコミュニティ形成と維持プロセスの構成、(2)インシデントに対するマインドの変容を促し、リスクマネジメントに関連した知識創造に必要な知識・洞察力・表現力を育成する医療リスクマネジメント学習プログラムの開発、(3)コミュニティにおいて学習プログラムを実施した結果に基づき病院全体の組織的学習に展開する仕組みの構成を目指す。 25年度は、前年度医学科生に実施した学習プログラム開発・試行結果について、「医療の質・安全学会」で発表した。また、上記(2)について定例ミーティング2回+事例検討7回を実施し、医療現場スタッフのインシデントに対する医療安全マインドを養うことを目的に、医療安全実務者対象のプロブグラムと、事例分析用ワークシートのフォーマットを開発した。さらに、①事例分析用ワークシートのフォーマット作成、②ファシリテータ人選、③ファシリテータに医療安全講習を実施し、事例提出依頼、④事例の問題点、ヒューマンエラー、どうすればもっと早く発見できたか、未然防止等を整理した後、「日本医療マネジメント学会第1回宮崎県支部学術集会~医療サービスサイエンス(スタッフ実践教育)~」で、以下の講習会・事例検討・討論会を実施した。 【対象】医療現場で働くスタッフ、【方法】医療安全講習後、事例検討を行い、人間の特性とインシデントに潜むルール違反に対する医療安全マインドを学ぶ、【結果】5グループ35名が事例検討に参加し、学習結果を発表し討議を行った。参加者20名から、「医療安全推進活動」「講義1、2」「講習全体の振り返り」についてアンケートを回収した。参加者は、ルール遵守の心理と実践の困難さを学んでいた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
副目標(2)「教材開発」 24年度はインシデントに対しルールや仕組みではなく、ルールを運用する医療者の心理に焦点をあてた医療安全マインドを学ぶことを目指し、予め準備した事例を用いた教材を開発し、医学部生対象の講習を行った。その結果、学生はルール運用者の心理について学ぶことができた。25年度は、医療者の医療安全マインドを養うことを目的とし、実事例を使用した討論方法をデザインし、医療安全の実務者向けのプログラム、事例分析用ワークシートのフォーマットを開発した。また、平成25年9月26日、「日本医療マネジメント学会第1回宮崎県支部学術集会~医療サービスサイエンス(スタッフ実践教育)~で、講習会・事例検討・討論会を実施した。その結果、①ルール運用者の心理に焦点をあてること、②安全ルールの具体的な改善ではなくルール運用時に運用者として何を注意、意識すればよいかを具体的に考えることの重要性を理解していた。一方、医療者として現場におけるインシデントの未然防止の立場から、「慌てている時ほど、一呼吸置く」など具体的な実践活動には結びつかないという回答が得られた。 副目標(3)「病院全体の組織的学習に展開する仕組みの構成」 実事例を使用した討論方法は、学会前に県内の医療安全管理実務者にファシリテータ役を依頼し、医療安全の実務者向け開発したプログラムや事例分析用フォーマットを使用した講習会および事例分析を試用し適切性について確認した。しかし、講習会後の事例検討発表会では、改善策が抽出できなかったという意見が散見されたことから、今後は、講習前のファシリテータ打合せにおいて、医療安全マインドを高める研修であることを共有していく必要がある。 研究の最終ゴールは、医療者の医療安全マインドを高めることである。今後、病院レベルのコミュニティでどのように拡大・利用することが有益か実証的に検討していく。
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今後の研究の推進方策 |
24年度、医学部医学科1年生の教育に試験的に導入した医療安全教材の構成と医学部医学科1年生教育の利用結果については、現在論文として成果をまとめており、医療教授学会への投稿を予定している。また、開発した学習プログラムと成果については国際学会で発表を予定している。 26年度の主な研究活動としては、まず始めに、25年度に開発した「医療安全の実務者向けのプログラム」「事例分析用ワークシートのフォーマット」について学会アンケートの結果から改良を行い、医療安全マインドを学ぶ目的に特化した教材内容に修正する。次に、修正した教材を使用して、前回協力を得たファシリテータ、一般公募した医療者を一つのコミュニティとした講習会・事例検討・討論会を実施すると共に、講習会・事例検討・討論会には一般公募した学生を観察者として加え、双方向の学びについて検証する。また、その結果を踏まえ、医療安全担当者ではない医療者・医学生がインシデント分析を体験できるツールの開発と、それらを用いてインシデント分析を継続的に行う学習コミュニティの形成を目指す。それらを総合して、病院全体の組織的学習に展開する仕組みの実現に向けて、医学部医学科生・看護学科生と現場の医療者が交流することができる学びの場の形成に向けた素地作りを目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
26年度は研究の最終年度であり、国際会議の発表を予定していることから、26年度使用分として積み残した。 今年度の成果である、医療安全マインドを喚起する教材の構成とその試用について、医療系あるいは教育系の学会への論文投稿を予定しており、そのための費用を計上している。また、並行して学会・国際会議の発表を予定しており、それらの費用を計上している。前述の医療系学会における教材を用いた講習会は、事後に医療安全マインドの変化について継続的な調査を行う予定である。
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