昨年度までに数々の状況に応じたインフォームド・コンセント(IC)手法に関する情報収集と検討を終えた。本年度は、その中で特に社会的ニーズが大きくまた今後重要性が増していくと思われる、不可逆的な状態に陥った患者さんやそのご家族に対しての「移植医療に関する情報提供(臓器提供者としての)」に関して、特に効果を挙げることが見込まれたため、この領域をさらに掘り下げた。 医療者はICの際には一般に、お勧めすること(リコメンド)の心づもりがある点(例:「意識レベルが悪いままなので気管切開」の説明をする場合には、一定のリスクがありますが、感染対策としてであったり、長期的なチューブ管理について、メリットの方が大きい)が特徴的であることが示唆された。つまり、医療者の心の内では、「気管切開がお勧め」という気持ちがあり「そのご承諾を得る」手続きのためのご説明に慣れているのではないか、という仮説が成り立つ。 移植医療に関する情報提供においてはこれが成り立たないため、広く情報が伝わらない。ICにおいては主治医は常に対象患者のメリットを考えそのための道筋を示すように修練を積んでいる。従って、移植医療に対する情報提供においては、これを正しく理解して、臓器提供を行いたいという意思がご本人やご家族にあれば、それを活かすことが、患者にとってもメリットである、という観点でICを得る事になる、ということが本質であると考えられた。
|