研究課題/領域番号 |
24659264
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
永井 貴子 金沢医科大学, 大学病院, 医員 (90625443)
|
研究分担者 |
金崎 啓造 金沢医科大学, 医学部, 講師 (60589919)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | EndMT / AcSDKP / 糖尿病性腎症 |
研究概要 |
糖尿病性腎症に対して,RAS阻害薬であるARB(アンギオテンシンII受容体拮抗薬)やACE-I(アンギオテンシンI変換酵素阻害薬)が末期腎不全への進行抑制のために臨床の現場にて用いられている。両者は同一視されがちであるが,Angiotensin以外にACE-Iに深く関与する基質が存在し,その経路を介することで抗線維化作用をもたらし,微量アルブミン尿抑制へと繋がることが示唆されている。その基質がAcSDKP(N-acetyl-seryl-asparytyl-lysyl-proline)で,抗線維化作用の他に,細胞増殖抑制効果,抗炎症効果,抗アポトーシス効果を有し,臓器保護効果も期待される。そこで,ACE-Iの臓器保護作用を見直すとともに,AcSDKPの作用が重要な位置を占めると仮定して,臨床的意義と創薬までも視野に入れた抗線維化薬としての今後の可能性を検討している。 上記課題に対して,当該年度は,in vitroとin vivoの両面から検討した。培養内皮細胞(HUVEC,HMVEC)を用い,TGF-βの刺激およびAcSDKPの孵置を行い,免疫染色を行い免疫組織学的に評価。AcSDKPはTGF-β刺激により誘導されるEndMT(内皮間葉系分化)および内皮細胞アポトーシスを抑制した。1型糖尿病モデルマウス(ストレプトゾトシン投与CD1マウス)を用い,プラセボ,ACE-I(captopril)単独,ACE-I・AcSDKP併用を行い,6ヵ月飼育後に得られたサンプルにて免疫組織学的に評価。ACE-I・AcSDKP群で腎糸球体硬化抑制を示し,メサンギウム領域の拡大と線維化領域の拡大はAcSDKP濃度と逆相関を示した。組織免疫染色においてもACE-I群では部分的にEndMTを,ACE-I・AcSDKP群ではほぼ完全にEndMTを抑制できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた,培養細胞を用いた内因性AcSDKPの糖尿病性腎症,特に腎線維化における意義を確認でき,また実験動物を用いたAcSDKPの腎保護効果つまり腎線維化抑制も確認をすることができた。近々,動物基礎実験結果は投稿する。 AcSDKP濃度と組織学的線維化の程度が逆相関していた。 一方で,糖尿病症例における各種臨床パラメーターと投薬内容,血中・尿中AcSDKP濃度の相関は5症例のサンプルを集めた。
|
今後の研究の推進方策 |
1)現在,進行中の糖尿病症例における各種臨床パラメーターと投薬内容,血中・尿中AcSDKP濃度の相関性を見出すために,臨床サンプルを集めていく。 2)実験動物の個体数を増やして結果の信頼性をあげていくことも検討している。 3)結果を論文としてまとめていくことも同時に予定する。 4)糖尿病の合併症は腎のみではなく,特に糖尿病による線維化が生じる心臓および肝臓の代謝マーカーも検討する。 5)microRNAから得らえたmicroRNA let-7 family,microRNA arrayの標的分子を同定する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
上記1)-3)の目的を優先する。 1)臨床サンプルの評価のために必要なアッセイ試薬を購入する。 2)CD1マウスを購入し,飼育に必要な餌や薬品(captopril,AcSDKP)の購入,評価時に必要な各種抗体の購入を行う。 3)microRNAとメッセンジャーRNA arrayの結果に基づいたqPCRプライマ-や標的分子の抗体を購入する。
|