研究課題
糖尿病性腎症に対してRAS阻害薬であるARB(アンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬)やACE-I(アンギオテンシンⅠ変換酵素阻害薬)が末期腎不全への進行抑制のために臨床の現場にて用いられている。両者は同一視されがちだが、Angiotensin以外にACE-Iに深く関与する基質が存在し、その経路を介することで抗線維化作用をもたらし、微量アルブミン尿抑制へと繋がることが示唆されている。その気質がAcSDKP(N-acetyl-seryl-aspartyl-lysyl-proline)で、抗線維化作用の他に、細胞増殖抑制効果、抗炎症効果、抗アポトーシス効果を有し、臓器保護効果も期待される。そこで、ACE-Iの臓器保護作用を見直すとともに、AcSDKPの作用が重要な位置を占めると仮定して、臨床的意義と創薬までも視野に入れた抗線維化薬としての今後の可能性を検討している。上記課題に対して、当該年度はさらに、STZ誘導糖尿病の2系統マウス(CD-1,SV129)を用いてマウス系統間の違いに注目した。腎線維化が重篤なCD-1マウスに、他系統で認めないAcSDKP抑制とそれに関連した抗線維化microRNA(miR)抑制を見出した。STZ投与後、CD-1マウスのみに顕著な糸球体硬化や尿細管間質線維化、DPP-4蛋白発現/酵素活性増加を認めた。抗線維化miRであるmiR-let7およびmiR-29がCD-1マウス腎のみ抑制され、AcSDKP持続皮下投与で線維化抑制、miR-let7およびmiR-29が正常化した。HMVEC(ヒト皮膚微小血管内皮細胞)へのAcSDKP孵置では、TGF-β2刺激で抑制された miR-let7とmiR-29が正常化し、さらに各々のmiR過剰発現で互いに発現増加/各々のantagomirを用いて互いに拮抗すると発現抑制した。これらmiR間のクロストークを見出した。抗線維化miRクロストークを介したAcSDKPの抗線維化プログラムの生理的な重要性を示唆することができた。
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BioMed Research International
巻: Article ID 696475 ページ: -
10.1155/2014/696475
Clinical and Experimental Nephrology
巻: volume19 ページ: 65-74
10.1007/s10157-014.1000-3