本研究では、高精度かつ高機能で安全な細胞治療技術の開発を推進するため、治療細胞染色体の特定部位に高い効率で外来遺伝子を組込む技術の開発を行うことを目的とした。疾患の原因となっている病態関連遺伝子の修復を高い効率で安全にかつ正確に行うため、標的染色体の特定部位において高い効率で遺伝子組み換えを行うためのベクター系を構築し、標的細胞に効率よく外来遺伝子を導入する条件を検証した。安全かつ高効率なホストゲノムの修正に有用な、二本鎖DNAの一方の鎖のみを切断するNicking酵素活性部位を付加したTranscription activator-like effectors (TALE)を搭載したベクターの開発を行った。従来TALEを用いたNickingでは野生型および変異型のFokI酵素活性部位をそれぞれ付加した一対の融合タンパク質を用いる必要がある。しかしながら、この場合には一対で最低でも50-60bp程度のTALEにより特異的に認識される配列を選択せねばならず、必ずしも容易ではない。そこで我々は、近年報告されたBacillus phage γ HNHEに由来し、非分裂細胞においてもNicking活性を持つとされるφGammaを融合させたTALE-Nickaseを発現するカセットを搭載したAAVベクタープラスミドを構築した。さらに前年度に引き続き、DMDモデル動物の病態解析を推進すると同時に、治療用細胞の調製法やIL-10を利用した機能強化の作用機構と効果を検討した。
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