研究課題
当初の予定に沿って,肺がん細胞株細胞株18株および肺がん切除サンプルにおいてSTAG2,SMC1A,SMC3,RAD21について,ゲノムDNAのPCRを行い,塩基配列決定を行った.SMC3に既報のアミノ酸変化を伴わないSNPが,RAD21にも同じくアミノ酸変化を伴わない既報のSNPが見られたが,そのほかの突然変異は認められなかった.このため,解析対象を変更することとした.近年,遺伝子発現の制御機構として,mRNAの3’UTRに結合して,タンパクへの翻訳抑制を来すマイクロRNAの癌における発現異常が多く報告されている.原発性肺癌では,let-7の発現低下が肺がん切除後不良因子であることが報告されている[Takamizawaら,Cancer Res.2004]ほか,申請者らもエピジェネティックな制御による発現抑制と臨床病理学的な解析を行い報告している[Kitanoら,Cancer Sci.2011,Watanabeら Int J Cancer2012].その一方で,近年癌において,マイクロRNAが結合するmRNAの3‘UTRの短縮が報告された[Marら,Cell 2009].そこでわれわれは,原発性肺癌で3’UTRの短縮を検索するために,アメリカ国立生物情報センターの発現プロフィールを統計解析プラットホームR上で動くプログラムパッケージであるRmodel[Salisburyら,PLOSONE2009]を用いて解析を行ったところ,C1Orf52などこれまで報告のない遺伝子で,3‘UTRの短縮が起きることを解明した.実際の肺がん切除サンプルでも,10遺伝子異常での短縮が確認された.現在これらの遺伝子短縮のスコアリングと,臨床病理学的パラメータとの相関について解析を行っている.
3: やや遅れている
遺伝性疾患で変異の報告のある遺伝子ではあったが,肺がんにおける予備的な解析では全く突然変異が認められなかった.症例を増やして,頻度の低い変化を追求することよりも,肺がんにおいて一定頻度の変化のあるものを解析する方が臨床病理学的解析と併せて有意義な標識となると考えられ,研究対象を変えた.mRNAの3’UTRの短縮はすでに10例程度の肺がんで確認しており,平成25年度中に100例を目途としてmRNAの短縮のスコアリングと臨床病理学的解析を終える予定である.
現在Rmodelによる肺がん発現プロフィールを用いた解析で高頻度に短縮の見られた遺伝子10個および文献的にこれまで短縮の報告のある2遺伝子このほかにも細胞増殖に関係のある遺伝子,ポリAサイトの使い分けに関係する遺伝子として報告されているPABPN1[Jenalら,Cell2012],CPEB1[Bavaら,Nature2013]の発現についても解析を行い,臨床病理学的情報との関連について解析を加える予定である.
これまで同様に,肺癌細胞株の培養のための試薬/消耗品,肺癌切除サンプルの分子生物学的解析のための分子生物学的解析のための試薬/消耗品に充当していく予定である.とりわけ,最近になってポリAサイトの使い分けに関係する遺伝子として報告されているPABPN1,CPEB1の発現についても解析を行い,相関があれば,遺伝子クローニングの上,細胞に導入して,mRNAの3’UTRに対する影響をRNAシーケンシングなどの手法で解析を加える予定である.
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