研究課題/領域番号 |
24659268
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
鈴木 和男 帝京大学, 医療共通教育センター, 教授 (20192130)
|
研究分担者 |
加藤 有介 徳島文理大学, 健康科学研究所, 准教授 (70596816)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | インフルエンザウイルス / ARDS / サイトカインストーム / NS1 / モデリング |
研究概要 |
NS1蛋白質と相互作用する因子を、リコンビナントとして作製し、NS1との相互作用様式をin vitroで検討することを目的とした。 1.NS1蛋白質の作用、発現系構築および精製:1)トリインフルエンザ(A/H5N1)感染でARDSを発症した小児患児の肺洗浄液中のサイトカイン/ケモカインの多量増加と好中球myeloperoxidase(MPO)活性の血中濃度が上昇に、NS1タンパク質が関与していることをA549肺上皮細胞による解析で明らかにした。A549肺上皮細胞にNS1プラスミッドを感染後H2O2-MPO の存在下ではA549肺上皮細胞は活性化し、大量のIL-8とMCP-1産生を誘導したが、IFNa, IFNb, TNF-aには顕著な変化はなかった。この結果は、インフルエンザウイルス感染によってH2O2-MPO 系が誘導され、NS1と連動して肺上皮細胞のサイトカインストームが誘発されるARDSの過程の一端が明らかになった。2)NS1のホモロジーモデリングを用いた研究: NS1タンパク質がサイトカインストームのキーとなることが示されたことから、NS1タンパク質の変異をホモロジーモデリングにより検討した。その結果、A/H5N1におけるNS1遺伝子の変異(S42P)をモデル構造に導入して解析した。この部位がProに変換されることでRNAとNS1の間の相互作用が弱まることが予想された。S42はαヘリックス中央部に存在する残基であることから、Proへの変換はRNAとの相互作用のみならず、NS1分子の全体構造を不安定化させることも予想された。この結果を踏まえ、NS1 RNA結合ドメインの大腸菌発現系にpGEX発現系にTEV protease切断サイトを導入し、確実性の高いNS1生産の発現条件を室温程度の低温としてグルタチオンセファロースを用いた1ステップ精製を可能にした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東京大学より帝京大学に移動したため、研究室の構築等に時間を要し、当初の予定により多少進展が遅れた。しかし、80%程度の進展があった。 24年度は、1)NS1蛋白質の作用:トリインフルエンザ(A/H5N1)に感染しARDSを発症した小児患児の肺洗浄液中のサイトカイン、ケモカインの多量増加と好中球の殺菌酵素で細胞の損傷に関わっているMPO活性の血中濃度が上昇することから、劇症型A/H1N1(PR-8株)をA549肺上皮細胞に感染させケモカイン・サイトカインを産生とMPOの関わりが明らかになっている。その内、NS1の関与が重要であることが推定されている。そこで、24本度は、NS1プラスミッドを感染させたA549肺上皮細胞は、H2O2-MPO 系の存在下での活性化し、大量のIL-8とMCP-1産生を誘導した。この結果は、インフルエンザウイルス感染によってH2O2-MPO 系が誘導され、NS1と連動して肺上皮細胞のサイトカインストームが誘発される過程が明らかになった。2)モデリングと精製: NS1タンパク質の変異をホモロジーモデリングを用いて検討した。その結果、A/H5N1のNS1遺伝子の変異(S42P)をモデル構造に導入して調べ、この部位がProに変換されることでRNAとNS1の間の相互作用が弱まることが予想された。Proへの変換はRNAとの相互作用のみならず、NS1分子の全体構造を不安定化させることも予想された。この結果を踏まえ、NS1 RNA結合ドメインの大腸菌発現系に、pGEX発現系にTEV protease切断サイトを導入し、確実性の高いNS1生産の発現条件を室温程度の低温としてグルタチオンセファロースを用いて1ステップ精製を可能にした。 今後は変異体タンパク質の作成を行いモデリングで得られた結果との比較を行う。
|
今後の研究の推進方策 |
25年度:NS1蛋白質を発現させたA549肺上皮細胞をNS1タンパク質抗体あるいは同等の抗体と反応させて相互作用する因子を分離する。 NS1結合成分の複合体を結晶化およびナノスケールでの微量結晶化の準備 26年度 NS1結合成分の複合体を結晶化およびナノスケールでの微量結晶化し、NS1の安定同位体標識によるシグナル帰属測定を施行して相互作用解析を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
【25年度(千円)】消耗品=800 :内訳:遺伝子工学試薬消耗品 300、蛋白質結晶化試薬消耗品 250、生化学試薬消耗品 150。プラスチック消耗品 100 国内旅費=200:内訳:代表者研究発表 90、分担者研究発表 50、研究打ち合わせ費 60、解析手伝い=100 24年度は東京大学から帝京大学へ移動したため、執行に遅延が出た。
|