研究課題/領域番号 |
24659268
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
鈴木 和男 帝京大学, 医療共通教育センター, 教授 (20192130)
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研究分担者 |
加藤 有介 徳島文理大学, 健康科学研究所, 准教授 (70596816)
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キーワード | インフルエンザ / ARDS / サイトカインストーム / NS1 / モデリング |
研究概要 |
【目的】肺上皮培養細胞を用いた研究では、劇症ARDSをmimicした条件下でNS1タンパク質の発現がサイトカインストームの引き金になり得ることが示された。NS1タンパク質がサイトカインストームを引き起こす際のキーとなる変異を探る目的でホモロジーモデリングによる解析を実施する。 【方法】NS1 RNA結合ドメインタンパク質(RBD)が、実際にどのような性質をもつのか調べるために大腸菌発現系を作成した。pGEX発現系を利用してグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として、野生型RBDの発現を確認した。【結果】大腸菌の細胞破砕後にグルタチオンセファロースを用いてワンステップで純度を高めることに成功した。また、S42P変異体タンパク質の発現も同様の系を利用して試みた。野生型RBDと比較して全く同じ条件でS42Pタンパク質のサンプル調製を行い、大量に高純度なS42P変異型タンパク質を得ることに成功した。この結果は意外であった。RBDの重要なαヘリックス上のProへの変異にも関わらず、全体構造への影響が最小限に食い止められている可能性が示唆された。16塩基長の2本鎖RNAの調製にも成功した。分光学的な手法やX線結晶構造解析等を利用することでこれらのタンパク質の構造や安定性の違いを比較することを検討している。またRNAとの相互作用の違いがあるのかどうか生化学的あるいは分子生物学的な手法で解析することも検討している。最終的にはこれらの変異がヒト細胞に及ぼす影響も評価していきたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
25年度の研究では、 NS1 RNA結合ドメインタンパク質(RBD)が、実際にどのような性質をもつのか調べるために大腸菌発現系を作成した。pGEX発現系を利用してグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として、野生型RBDの発現を確認した。大腸菌の細胞破砕後にグルタチオンセファロースを用いてワンステップで純度を高めることに成功した。また、S42P変異体タンパク質の発現も同様の系を利用して試みられた。上述のようにS42P変異体タンパク質の場合には、その立体構造が不安定化することが予想された。不安定なタンパク質を大腸菌で発現させる場合に、うまくタンパク質合成が進まないことがよくある。大腸菌の細胞質にもともと存在するタンパク質分解酵素の働きによって、安定性の低いタンパク質は積極的に分解されていくからである。したがってこの発現精製の成否を、S42P変異体タンパク質の安定性を評価する上での基準のひとつとして利用することが出来る。そこで野生型RBDと比較して全く同じ条件でS42Pタンパク質のサンプル調製を行ったところ、何の問題もなく大量に高純度なS42P変異型タンパク質を得ることに成功した。 【この結果は予想外によい結果であった】。RBDの重要なαヘリックス上のProへの変異にも関わらず、全体構造への影響が最小限に食い止められている可能性が示唆された。 本報告では詳細は述べないが16塩基長の2本鎖RNAの調製にも成功した。このRNAはRBDと結合すると報告されている分子である。今後はRBDの野生型と変異型のタンパク質の性質をさまざまな手法で比較していきたい。分光学的な手法やX線結晶構造解析等を利用することでこれらのタンパク質の構造や安定性の違いを比較することを検討している。
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今後の研究の推進方策 |
【26年度】 NS1結合部分の複合体を結晶化およびナノスケールでの微量結晶化し、NS1の安定同位体標識によるシグナル帰属測定を施行して相互作用解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究用消耗品費用を予算額より低く抑えられた。 【26年度(千円)】 消耗品=700:内訳:遺伝子工学試験消耗品200、蛋白質結晶化試薬250、生化学試薬150、プラスチック消耗品100 旅費=100:内訳:研究打ち合わせ費100
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