肺癌手術症例を含むTMA(tissue microarray)を用いてautophagyに関与するRB1CC1とp62の免疫染色を施行し、腫瘍細胞の細胞質および核における染色態度のスコアリングを行った。RB1CC1の核内発現は腫瘍抑制に関与していると考えられ、乳癌においてはその発現の増加が臨床的予後の良好なことを示唆する。しかし肺癌ではRB1CC1の核内発現率が低く腫瘍抑制的には機能しておらず、このことよりRB1CC1は組織依存性のバイオマーカーである可能性が示唆された。一方、RB1CC1の細胞質内発現はオートファジーの制御に必須と考えられている。肺癌ではRB1CC1が細胞質で発現しており、予後不良化と関連している可能性が考えられた。次にp62の発現を検討したところ、RB1CC1およびp62が共発現している群は他に比べて5年生存率は不良であった。p62の発現を陰性、弱陽性、強陽性に分けて評価したところ、p62強陽性群では5年生存率が最も不良となり、p62/SQSTM1の過剰発現は肺癌症例予後不良のバイオマーカーになり得ると考えた。 一方、口腔扁平上皮癌化におけるp62/SQSTM1の役割とその臨床的意義を検討した。口腔扁平上皮癌、異形成上皮、正常上皮においてp62の免疫組織化学的評価を行い、ヒト口腔扁平上皮癌細胞株を用いたp62の生物学的機能解析も行った。細胞生物学的な解析より、p62は癌細胞のグルタチオン誘導に寄与し、放射線治療抵抗性と関連することが示唆された。組織評価において口腔扁平上皮癌でp62の過剰発現を示す症例は予後不良であった。p62/SQSTM1の過剰発現は口腔扁平上皮の癌化に寄与し放射線治療治療抵抗性、予後不良のバイオマーカーになり得ることが実証でき、論文報告し得た。本内容は新聞各紙でも報道された。
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