研究課題
抗CCP抗体は関節リウマチ(RA)の特異的自己抗体であるが、早期RAの約半数は抗CCP抗体陰性であり、診断がしばしば困難である。診断の遅れが関節破壊につながるため、抗CCP抗体陰性RAの特異的な診断マーカーが求められている。今回我々はAlphaScreen法と呼ばれる自己抗体の網羅的スクリーニング法を用いて、抗CCP抗体陰性RA血清中の未知のシトルリン化抗原に対する自己抗体のスクリーニングを行った。Preliminaryな実験としてVimentinをポジコンとして用いて、シトルリン化した蛋白ととしていない蛋白でAlphaScreen法にて検出可能かどうかを検討し、シトルリン化ビメンチン抗体をWestern, ELISA同様に検出可能であることを確認した。次に2400蛋白の蛋白アレイを用いて、抗CCP抗体陽性RA患者2名、抗CCP抗体陰性RA患者血清1名、健常人血清1名を用いて、シトルリン化蛋白抗体のスクリーニングを行った。結果、いくつかのシトルリン化蛋白に特異的に反応する血清がみられたが、健常人血清にも反応する抗原が意外と多いことが判明した。それは非特異的結合ではなく、Western blotにても健常人血清が多くの蛋白に反応していることが確認されたため、RA特異的な抗体を選択するためにはより多くの健常人血清を用いてスクリーニングを行う必要があると考えられた。今後、健常人血清を増やしてスクリーニングするとともに、蛋白ライブラリーの数も増やす予定である。
2: おおむね順調に進展している
順調に研究は進展しているが、AlphaScreen法の感度が非常に高く、健常人血清に認められる自己抗体にも反応がみられるため、健常人血清の数を増やしてスクリーニングを行う必要がある。AlphaScreenシステムではビオチン化した蛋白アレイを用いるが、蛋白にによってはビオチンが蛋白の高次構造のため、表面に露出せず系がうまくいかない場合があることがわかり、その場合界面活性剤を用いて、高次構造をほどいてやることによって、反応性が出てくることがわかったのだが、その条件検討などに手間取った。上記のようないくつかの問題点は出てきているが、克服し、ひとつひとつ前に進んでいることから、おおむね順調に進展していると自己評価している。
現在、新規蛋白ライブラリーを作成中(これまでのライブラリーが細胞膜蛋白が中心であったため、シトルリン化蛋白の報告が多い細胞骨格やシャペロン蛋白を中心とした蛋白を増やす目的)。健常人、抗CCP抗体陰性RAの検体数を増やして、AlphaScreenにて新たなシトルリン化蛋白抗体をスクリーニング予定である。そこから候補蛋白を絞って、WesternやELISAにて確認したのち、他の膠原病やリウマチ性疾患での自己抗体陽性率を調べ、感度、特異度の高い自己抗体を検索する予定にしている。
AlphaScreenに必要なビーズなどの消耗品が中心。愛媛大学との共同研究で進めているため、打ち合わせや共同実験などのための旅費も必要となる。
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