研究課題/領域番号 |
24659282
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
橋口 照人 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (70250917)
|
研究分担者 |
伊藤 隆史 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 特任講師 (20381171)
大山 陽子 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 特任助教 (20583470)
清水 利昭 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (50468055)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | VEGF-A / 血管新生 / 血管透過性 / 脾臓 / 赤血球 / 鉄 / 活性酸素 / 老化 |
研究概要 |
○既に作出済みである免疫B細胞特異的VEGF-A産生tgマウスにおける、鉄代謝(脾・骨髄・肝臓)の評価として肝臓におけるhepcidin発現レベルと十二指腸/肝臓/脾臓/骨髄における鉄の動態解析(鉄代謝pathway解析)を行った。 ○免疫B細胞特異的VEGF-A産生tgマウスにおける脾類洞の血管密度の測定として脾臓におけるPECAM-1、 VE-cadherin、 ephrinB2(動脈内皮)、EphB4(静脈内皮)の染色とreal-time PCRによる発現定量解析を行った。 ○結果と考察 B細胞産生VEGF-A tg マウスにおいては鉄代謝pathwayの変化による貧血をきたし、また貧血の程度がマウスの性差、週令に依存する可能性を見出した。生理学的に考察すると脾臓における血管透過性と赤血球代謝が連動する必然性の存在は十分に想定できることであり、加齢、性差が影響することも経験上理解できる。しかしながら、過去の研究において脾臓における血管透過性と赤血球代謝との関連を繋ぐ報告はない。脾臓における赤血球選別機構の制御は循環赤血球の半減期の調節を通してその数に影響を与え、赤血球変形能(赤血球レオロジー)の多様性の出現とともに微小循環での最終的なoxygen deliveryのレベルに影響する。このことはすなわち、そこに不可避的に存在する活性酸素 (reactive oxygen species)の発現と組織の老化に関わってくることが推測される。B細胞産生VEGF-Aが血管透過性作用を介して脾臓における赤血球ホメオスターシスを調節している仮説とVEGF-Aの血管透過性作用の本質的意義が赤血球ホメオスターシス/oxygen-deliveryの調節である仮説の実証に一歩近づいたと考える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
発生分化の鍵分子の一つである血管内皮細胞増殖因子(以下VEGF-A)の主要な生理活性である血管透過性作用の本質の一つが脾類洞における血管応答を介した赤血球選別機構の制御にあるとする仮説を証明することが本申請の目的であった。既に作出済みであった免疫B細胞特異的VEGF-A産生tgマウスの解析の結果、週令、性別に依存して貧血を発症し、鉄代謝pathwayに異常をきたしていることが分かった。従ってVEGF-Aのもつ血管透過性作用の生理学的意義の解明に一歩近づいたと考えている。今回の結果を、分子論的立場においてVEGF-Aのもつ血管透過性作用の赤血球代謝への新たな理解として、生理学的立場から脾臓での赤血球の再利用選別における新たな分子機序の理解として捉えることが可能であると考える。更に赤血球代謝はoxgen deliveryに直接的に関わっており活性酸素産生の側面からもヒトの寿命に関わる。生体のoxgen deliveryの根本原理の新しい理解に一石を投じる観察であると評価している。
|
今後の研究の推進方策 |
発生分化の鍵分子の一つである血管内皮細胞増殖因子(以下VEGF-A)の主要な生理活性である血管透過性作用の本質の一つが脾類洞における血管応答を介した赤血球選別機構の制御にあるとする仮説を更に詳しく証明することにより赤血球代謝さらにはヒトの老化のメカニズムに新たな機序を提唱したい。ヒトB細胞におけるVEGF-Aの発現レベルが脾静脈への赤血球のre-entryのレベルに影響を与え、その結果、循環赤血球の変形能に多用性が出現し、微小循環におけるoxygen deliveryのレベルが変化することを更に詳しく解析する。赤血球のレオロジー特性として最も重要である赤血球変形能は,微小循環動態を左右する重要な因子でありoxygen delivery機能に直接に関わる。このことはすなわち、そこに不可避的に存在する活性酸素 (reactive oxygen species)の発現と組織の老化に関わってくることが推測される。これまでの研究を発展させ、ヒト加齢性疾患の病態への新しい理解を築きたい。既に述べたようにマウスモデルは既に確立して解析を開始しており実現可能な計画であると考えている。
|
次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
|