研究課題
脾臓におけるヘモジデリンの沈着がB細胞特異的VEGF-A発現tgマウス(以下、B-VEGF tgマウス)において著減している観察をきっかけとして、B細胞産生VEGF-Aが血管透過性作用を介して脾臓における赤血球ホメオスターシスを調節している可能性の存在を着想とした本研究は平成25年度に新しい知見を得た。平成25年度の研究により肝におけるhepcidinの発現が亢進していることが明らかとなった。hepcidinの肝での発現は炎症性サイトカインの制御下に鉄代謝を制御していることが知られているが、B-VEGF tgマウスでの肝におけるhepcidin の発現が亢進している結果はhepcidinの発現制御が炎症性サイトカインに非依存的な機序も存在することを明らかにした。また、B-VEGF tgマウスは鉄欠乏性貧血に矛盾しない所見を示すが、食塩水の濃度勾配を用いた赤血球脆弱試験にて本マウスに赤血球脆弱性は認めないこと、更に赤血球の半減期が短縮している可能性が示された。また、本マウスのリンパ節類洞においてヘモジデリンの沈着すなわちhemophagocytosisが観察されることも明らかとなった。これらの観察を統合すると、B細胞におけるVEGF-Aの発現亢進により鉄欠乏性貧血、肝でのhepcidinの発現亢進、赤血球の半減期の短縮とともに脾類洞におけるヘモジデリンの沈着の減少とリンパ節類洞でのhemophagocytosis(ヘモジデリンの沈着の増加) が see-saw現象として存在することが明らかとなった。平成26年度はこれらの観察を一元的に説明することにより血管新生作用と血管透過性作用の両側面を有するVEGF-Aと赤血球代謝の新しい関連機序を解明することを目標とする。
2: おおむね順調に進展している
既に作出済みのモデルマウスの解析により、研究計画に沿った内容を達成できた。また更に新しい知見を得ることもできた。
平成25年度にB細胞特異的VEGF-A発現tgマウスの脾臓とリンパ節においてヘモジデリンの沈着がsee-saw現象として観察されることが明らかになったことを手掛かりとして、平成26年度は研究目的の主眼である脾類洞における血管応答を介した赤血球選別機構の制御の解明に直接アプローチする予定である。
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