研究実績の概要 |
感染に伴う炎症性リンパ節腫脹のプロセスにおいて樹状細胞の所属リンパ節へのリクルートには免疫B細胞の産生するVEGF-Aが関わる (Angeli V, et al. 2006)。そこで我々は、免疫B細胞特異的にVEGF-Aを発現するマウス (CD19Cre/hVEGF-Aflマウス) を作出した結果、CD19Cre/hVEGF-Aflマウスのリンパ節においてはリンパ節に特異的な脈管構造であるhigh endothelial venule (HEV)の増加とともにマウス個体にLPS toleranceが誘導されることを報告してきた (Shrestha B, et al. 2010)。一方、CpG投与による感染症モデルマウスにおいて単球由来の樹状細胞による血球貪食がIL-10の産生を介して過剰炎症の調節に関与していることが報告 (Ohyagi H, et al. 2013) され、臨床における血球貪食の免疫系への関与に新しい視点が加えられた。更に、近年赤血球におけるプログラム細胞死 (eryptosis)が提唱され、赤血球死と免疫系の関係にも新しい概念が加えられている。今回、54~55週齢の“メス” CD19Cre/hVEGF-Aflマウスにおいて、リンパ節における血球貪食と鉄欠乏性貧血に類似の貧血が観察された。凝固・線溶系は低次元のレベルにおいて常に作動しており、一般的に出血は炎症反応を伴う。血管外に漏出した赤血球に対する生理的血球貪食もまた免疫系の調節ならびに鉄代謝とリンクしている可能性を示唆した。鉄代謝の精密な制御は、血管内のみならず血管外に漏出した赤血球に対しても生理的に機能している可能性が示された。また今回の研究結果は“メス”マウスに特徴的であり加齢によって顕著となった。これらの結果は免疫系-性差-加齢が相互に関連することを示唆すると考察している。
|