研究課題
本年度は、17β-エストラジオールのエストロンへの変換反応を触媒する酵素、17β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ (17β-HSD) のモルヒネからのモルヒノン生成反応への関与について検討した。すなわち、平成25年度にラット肝臓から cDNAをクローニングし昆虫細胞系に導入してタンパク質を発現させた、ラット17β-HSD type 2と type 6の2種類を酵素源、モルヒネあるいはそのジアステレオマーであるモルヒノンを基質、NAD+あるいは NADP+を補酵素として、モルヒノン生成の有無をHPLC並びにLC/MSにて検討した。その結果、ラット17β-HSD type 2はNAD+あるいはNADP+存在下にモルヒネをモルヒノンに酸化したが、type 6 ではモルヒノン生成が認められなかった。補酵素としての機能はNAD>NADPであった。一方、エピモルヒネを基質とした場合にはいずれの酵素、あるいは補酵素を用いた場合もモルヒノンは確認できなかった。さらNADHあるいはNADPHを補酵素として、両酵素によるモルヒノンの還元反応を調べたところ、NADH存在下にモルヒノンからモルヒネが生成したが、エピモルヒネは検出されなかった。またこの反応における補酵素の機能としてはNADH>NADPHであった。続いて、この反応メカニズムを検討するために、ラット17β-HSD type 2 とモルヒネ及びモルヒノンとのドッキングシミュレーションを行った。すなわち、結晶化されたラット17β-HSD type 2がないことから、既に報告のあるNADP+を含むラット17β-HSD type 1結晶構造を鋳型に17β-HSD type 2のホモロジーモデルを構築し、その活性中心空洞にモルヒネあるいはモルヒノンをドッキングさせた。その結果、17β-HSD type 2に対するモルヒネとエピモルヒネの結合様式は同様であるが、ヒドロキシ基の配向性の違いが、大きな活性の差となって現れるものと推察された。
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