研究課題/領域番号 |
24659290
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
石川 慎一 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (00444662)
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研究分担者 |
溝渕 知司 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70311800)
西江 宏行 岡山大学, 大学病院, 助教 (20379788)
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キーワード | 超音波 / 脊柱管 / 腰椎椎間板ヘルニア / 低侵襲 |
研究概要 |
平成25年度の目標は以下の3項目であった。 1.前年度データを分析して目的組織の素早い確実な描出方法の検討 【はじめに】血管内超音波カテーテルでは,描出不良の結果を前年度に得ていた。【方法および結果】心腔内超音波カテーテル「AcuNav」を用いて,22G10cmブロック針2種の視認性についてリニアプローブと比較して検討した。心腔内超音波カテーテルは,プローブ先端に液体成分(水,血液など)が減少すると視認性が低下した。一方,液体成分が豊富にある環境下では,深度5cm以上の組織も良好な視認性を得た。ただし,シャフト有効長が90cm,外径が2.8mm(8Fr)であり腰部脊柱管への応用は可能だが,頸部,胸部への応用は難しいこと,カテーテルの太さが問題となることを確認した。【結語】心腔内超音波カテーテルの視認性は良好で,腰部と仙骨部に限り,脊柱管内(硬膜外腔)や周囲組織の観察が可能と思われた。 2.椎間板造影,神経根ブロックなどの施行の様子を超音波画像でとらえ穿刺針の位置,薬液の広がりなどを検討3.経皮的髄核摘出術においてヘルニア摘出時の様子を超音波画像でとらえ,硬膜外超音波併用治療の有用性を検討 【方法および結果】Thiel法固定遺体2体を用いて,胸部~仙骨までの脊柱管と腰仙椎の解剖をそれぞれ行った。心腔内超音波カテーテルは径が太いが仙骨および腰部脊柱管内の硬膜外背面で観察することは可能であった。腰椎レベルでの脊柱間内から椎間板組織の操作が観察可能であった。一方,胸部では,脊柱管内の生理的狭小化により脊柱間内組織の損傷の可能性が懸念された。またプローブの椎間板と椎間孔の視認性は良好であった。【結語】心腔内超音波カテーテルは,脊柱管内では腰椎以下での使用が適切と思われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度の目標は以下の3項目であった。 1.前年度データを分析して目的組織の素早い確実な描出方法の検討すること,2.椎間板造影,神経根ブロックなどの施行の様子を超音波画像でとらえ穿刺針の位置,薬液の広がりなどを検討すること,3.経皮的髄核摘出術においてヘルニア摘出時の様子を超音波画像でとらえ,硬膜外超音波併用治療の有用性を検討することである。 1と2.血管内超音波(intravascular ultrasound:以下IVUS)の脊柱管への応用を考慮していた。ファントムを用いた研究でも解像度,到達度ともに不十分であり,心腔内超音波カテーテル「AcuNav」を使用した検討に変更した。ファントム装置を用いて心腔内超音波カテーテルによる視認性と安全性,強度の確認に関しての研究は達成できた。 3.についてはまずご遺体を用いた観察研究を優先した後に有用性および合併症の可能性を検討を行い,その後患者への応用を検討することとした。従って2.の超音波装置による脊柱管内外の各組織の特徴,性状の調査に関しては,1の結果を踏まえてつつ,ご遺体での観察による検討を行った。Thiel法固定遺体という超音波画像診断装置の視認性が保たれる特殊な固定遺体を用いて脊柱管内およびその周辺部の観察研究を予定した。研究に適する遺体の確保,およびその解剖に時間を要したが25年度内に達成できた。3.すなわち硬膜外内視鏡の適応がある腰下肢痛を持つ患者に対して内視鏡での観察と超音波装置での観察比較に関しては,1,2の結果から患者への応用が期待できると思われた。倫理委員会の承認を得て行う前向き研究を平成26年度に計画中である。達成度としては平成24年度当初の計画よりやや遅れたが,患者に用いる安全なアプローチ法や避けるべき事象が明らかになったことからも必要な手順を踏んで研究を進めていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の目標は以下の3項目である。 1.経皮的椎間板髄核摘出術を予定している患者における心腔内超音波を用いた術中所見の検討. 2.硬膜外内視鏡の適応患者(腰椎椎間板ヘルニア,腰椎術後痛患者における)における心腔内超音波を用いた硬膜外腔組織およびその周辺の観察と検討. 3.上記二つの結果による新しい診療方法の提唱. これらについては前述のように,倫理委員会の承認を得て患者に施行する予定である。手続きなどを効率的に行い,年度末に達成できるように考慮している。患者の利益を考慮し,安全かつ確実に行うことが,研究として最も重要と考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
患者の安全を確保するために,Thiel法固定遺体を用いた観察研究を予定した。ご遺体確保に時間を要したため,25年度中の終了が困難となった。 心腔内超音波を患者に応用して,経皮的椎間板摘出術における観察や硬膜外内視鏡における診療時に各部位の観察を行い,有用性を確認する予定である。
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