研究課題
挑戦的萌芽研究
(1)疼痛条件付け トレーニング日:サッカリン水を飲水後、片側足底にカラゲニンを皮下投与し、局所炎症性疼痛モデルを作製。翌日には、注射側足部の発赤、腫脹が観察され、典型的には足を浮かせる、腫脹した足をなめる等の疼痛行動も観察され、von Freyテストで注射側足底の痛覚過敏を確認。テスト日:サッカリン水を提示したところ、少量しか摂取せず、摂取開始と同時にパニック状態になる動物もいた。痛覚過敏は、注射側足底のみならず、反対側足底で観察された動物もいた。2)除痛条件付け トレーニング日前日:通常通り飲水させた後、疼痛条件付けの場合と同様に片側足底にカラゲニンを皮下投与した。トレーニング日:注射側足底の痛覚過敏を確認、サッカリン水を飲水させた後、鎮痛薬腹腔内投与を行い、von Freyテストで鎮痛効果を確認。テスト日:サッカリン水を提示したところ、通常通り摂取し、von Freyテストで痛覚閾値の上昇を示す動物もいる一方で、少量しか摂取せず、痛覚過敏となる動物もみられた。また除痛効果は一般的に長くは続かなかった。3)考察 プラセボとしてサッカリン水を用いて、痛条件付けモデル、除痛条件付けモデルともに作製可能であったが、特に、除痛条件付けモデルについては、個体により、痛覚閾値の変化は上昇から、逆に低下まで大きくばらついた。痛覚には不快感という情動が伴う。テスト日にサッカリン水飲水でパニック状態となった動物、両側足底痛覚過敏を示した動物では、疼痛とともに不快感が強く条件付けされたことが推測された。除痛条件付けモデル作製時に不快刺激を最小とするため、足底部の局所外用剤の使用も試みたが、明らかな除痛条件付けは観察されなかった。また、もともと「痛みに強い」個体、「痛みに弱い」個体があり、結果の評価には、情動傾向を加えて評価することが必要と思われた。
4: 遅れている
動物の情動傾向として、もともと「痛みに強い」個体、「痛みに弱い」個体が存在すること、さらに、条件付け操作の内包するストレス要因等から、条件付け操作が与える影響がばらついたと思われる。そのため、脳内機序の解析対象であるプラセボ除痛条件付けモデルの作製に予測した以上に手間取ってしまい、実験計画が予定通りに進行しなかった。
実験動物の情動傾向を、実験開始前の痛覚テストに加えて、オープンフィールドテスト等で条件付け前にあらかじめ評価しておき、もともと「痛みに強い」個体、「痛みに弱い」個体で条件付けの効果を比較解析することを追加実施する。実験動物群を情動等のファクターで分けることにより、より安定した条件付けモデルの作製が可能になると思われる。本年は脳内機序の分析を進める予定である。
プラセボ除痛条件付けモデルの安定した作製に予測した以上に手間取ってしまい、条件付けの脳内機序解析の開始が遅れた。そのため、主に試薬購入を次年度に見送ることとなり、研究費を一部次年度使用にまわすこととした。
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Journal of Molecular and Cellular Cardiology
巻: Volume 53, Issue 6 ページ: Pages 760-767
DOI: 10.1016/j.yjmcc.2012.08.006