痛覚閾値の評価法として、従来、圧刺激を用いたvonFrey法、熱刺激を用いたホットプレート法を用いていたが、いずれも与えた刺激により誘発された疼痛に対する急性反応の変化を痛覚閾値の評価として用いるものである点、また、実験者による評価に主観的なばらつきが生じる可能性がある点、などを考慮し、自発痛による行動量の低下を、runnning wheelを用いた経時的かつ一定期間にわたる客観的な数値として評価する系を立ち上げた。さらに、制限飲水自体がかなりのストレスになることを考慮して、飲水の制限時間を極力短縮した。これにより、疼痛そのものに加えて、疼痛による動機付けの変化をも含めた包括的なより実際的な「疼痛」の評価を、より客観的に行える系を確立した。 さらに、主観的な感覚としての疼痛は、情動の影響も大きく受ける可能性があることから、オープンフィールドを用いて評価した不安傾向の極端に高い動物は実験群に用いないことにした。(不安傾向の高い動物は、除痛条件付けが、疼痛条件付けになってしまう傾向が認められた。)以上、条件付けが安定して行える条件を模索したが、それでも、動物に対する実験操作の意図しないばらつきなどからか、除痛条件付けは必ず成立するまでには至らなかった。また、成立したと思われる除痛効果も持続は長くはなかった。条件付けに用いる疼痛の強度、除痛の強度により、除痛条件付けの成否が影響を受ける可能性も示唆された。
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