研究課題
放射線同位体11Cで標識が可能な新規のアクロメリン酸誘導体PSPA-4を合成し、PSPA-4の神経障害性疼痛に対する効果、in vitro autoradiography(in vitro ARG)法および後根神経節(DRG)培養細胞でのカルシウムイメージング法を用いて、以下の知見を得た。①アクロメリン酸誘導体PSPA-4は、アロディニア誘発作用と抗アロディニア作用の2つの効果を有していた。②PSPA-4は、カイニン酸受容体に結合していることが示唆された。③PSPA-4はDRG培養細胞内のカルシウム濃度を上昇させ、カイニン酸とは異なる活性を示した。また、ラットで神経障害性痛モデルを作製し、その脳・脊髄を用いてin vitro ARG法を行い、以下の知見を得た。①神経障害性痛モデルの脳・脊髄に特異的な[11C]PSPA-4の結合部位を見出せなかった。②神経障害性痛モデルの脳での[11C]PSPA-4の結合部位は、痛み刺激が伝わっている右半球と、痛み刺激が伝わっていない左半球で比較して差は認めなかった。これらの事から、 [11C]PSPA-4を用いたin vitro ARG法は、神経障害性痛に関与する部位に特異的に結合し痛みを可視化するには、[11C]PSPA-4の比放射能が低く、困難と考えられた。現在、共同研究チームは新たなPSPA-4類縁体を開発中である。本研究によりアクロメリン酸誘導体PSPA-4が既知のカイニン酸受容体とは異なる経路でアロディニアに関与していることを明らかにし、PSPA-4 はアクロメリン酸A の作用メカニズムの解明だけではなく、NMDA、AMPA 受容体に比較し解明が遅れているカイニン酸受容体を介した中枢神経および末梢神経での痛みの伝達機構の解明に寄与する可能性を示した。しかし、痛みを可視化するには放射性同位体で標識可能な新たな化合物が必要である。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)
European Journal of Pharmacology
巻: 710 ページ: 120-127
10.1016/j.ejphar.2012.10.023