研究課題/領域番号 |
24659297
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
仲井 邦彦 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00291336)
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研究分担者 |
稲波 修 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 教授 (10193559)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 放射能 / 放射性セシウム / 環境 / 衛生 / 安全と安心 |
研究概要 |
東日本大震災後の福島第一原子力発電所の事故は、広い地域で放射性物質による汚染を引き起こした。これらの地域では低レベルながら食物摂取を介した内部被ばくが懸念される。食品安全委員会は食物摂取によるリスク評価を試みたものの、内部被ばくに関する健康影響のデータがないこと、感受性が高い小児のリスクデータが十分ではないこと、などが明らかとなり、低レベル内部被ばくによる周産期影響について科学的な議論は停滞している。このような状況の中で、放射線に対し感受性が高い胎児および新生児に関して、自然放射線による被ばくと対比させた内部被ばくの実態を明らかにすることが必要と考え、少量試料でも測定可能なWell型ゲルマニウム半導体検出器を利用し、震災前および震災後に収集した臍帯血、胎盤、母乳等の残留放射線量の比較を進めた。 これまでに宮城県三陸沿岸部において、母親から調査参加に対して同意が得られた17名について、母乳と胎盤の放射能分析を実施した。いずれも検出下限値未満であり、新生児への放射性化学物質の移行は極めて少ないことが示された。測定結果は母親に返却しアンケートを回収した。その結果、「近所から貰う地物野菜が怖くて食べられない」「母乳を子どもに与えていいのか不安である」といった悩みが述べられており、「調査結果を見て安心した」という反応がある一方で、「安全であることがわかったが、それでも不安だ」といった質問が寄せられた。このため2013年1月26および27日に、宮城県医師会と共催で結果報告会を行った。安全であるかどうかについては、これまでのモニタリングからも「安全である」と考えて間違いないと判断されるが、不安感の解消が大きな課題であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生体試料の放射能分析そのものは17例(母乳と胎盤それぞれ)と少ないものの、いずれも検出下限値以下であり、人体汚染は無視できるほど小さいことが明確となった。その一方で、授乳中の母親は「安全であることは理解できるが、それでも安心できない」との感想が寄せられた。このため、今後の研究として「安全と安心」をどのように確保するのかが課題となるものと考えられた。 これまでは宮城県県北(県北にも県南とどうようなホットスポットがある)での活動であったが、より汚染度の高い県南での活動が必要と考えられた。県南の丸森町が候補であり、疫学調査を行う上で、地域の各団体との調整を進めているところである。
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今後の研究の推進方策 |
母乳の収集をさらに進め、放射能分析を行う。なお、調査地として過去試料を保管している宮城県気仙沼地域ではなく、丸森町などが候補と考えられた。その場合の欠点として、過去試料がなく比較できないこと、また産科医療機関がなく胎盤の収集は難しい。このため母乳をメインに収集するとともに、食事由来のばく露に対して不安があることから、陰膳でのモニタリング手法を柔軟に取り入れることとする。 分析結果を参加者本人に返却する。そのことで「安全と安心」に対する理解が深まるのかを検証する。また、そのようなモニタリング結果を談話会などの形で市民に返すことで不安解消の効果があるかどうかを検討する。このため該当自治体や漁協、農協などとの連携を進める。 その一方で、当初計画では、気仙沼地区で過去に採取された母乳や胎盤を用いて放射能分析を行う計画であった。しかし、震災後試料でいずれも検出下限値以下であり、その過去試料の分析を実施するかは研究費の効率的な運用を視野に今後検討することとする。
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次年度の研究費の使用計画 |
生体試料の放射能分析をWell型ゲルマニウム半導体検出器を用いて委託分析を実施する。胎盤については、入手が困難であり、主に母乳を使用する。また、被災地では食品を介した人体汚染に対する不安が極めて大きいことが示されている。このため参加者が希望する場合には、陰膳についても収集し放射性セシウムの分析を行うが、この場合は通常タイプのゲルマニウムγスペクトロメーターを用いる。 分析結果の返却、その結果を見た時のアンケート調査の実施、さらには研究結果を市民に報告する活動が重要と考えられる。このため通信費や旅費などに研究を有効利用する。 次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したこと、並びに当初計画で予定していた過去試料の分析について、いずれも検出限界以下となることが明白なことから,分析を取りやめたことに伴い発生した未使用額となる。平成25年度請求額と合わせ、平成25年度の研究遂行、特に現在も被ばくが進行している市民のモニタリング調査とそのリスクコミュニケーションに重点的に使用する予定である。
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