東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故は、宮城県県北を含む広い地域で放射性物質による環境汚染を引き起こした。宮城県における汚染度は低いものの、県内でも汚染度が比較的高い県北では、低レベルながら食の安全と安心を中心に、食物摂取を介した内部被ばくに対する懸念が存在している。このような状況の中で、放射線に対し感受性が高い胎児および新生児に関して、自然放射線による被ばくと対比させた内部被ばくの実態を明らかにすることが必要と考え、少量試料でも測定可能なWell型ゲルマニウム半導体検出器を利用し、震災前および震災後に収集した臍帯血、胎盤、母乳等の残留放射線量の比較をさらに継続した。 宮城県三陸沿岸部に住居を有する母親より調査参加の同意を得て生体試料(母乳など)の放射能分析を実施したが、本年度もいずれも検出下限値未満であり、新生児への放射性化学物質の移行はほぼないことをあらためて示した。前年度の結果を含め測定結果を母親に返却した。 リスクコミュニケーションを意図し、2014年1月25日に、気仙沼市にて自治体の協力を得て「放射線被ばくのリスクコミュニケーション」に関する報告会を開催した。前年度に比較して、放射能汚染そのものを不安視するものから、本年度は「不評被害にともなう経済的損失」を懸念する方の参加が増加し、内部被ばくそのものを不安視する方は減少した。原発事故から時間とともに「安全と安心」の中身が推移していることが示唆された。 前年度分を含めて、アンケートを回収し、不安感が強い方の傾向を検討した。その結果、欠如モデルであっても、放射線に関する勉強会に過去に出たことがある方で不安感は明らかに小さく、勉強会の有効性と、基本的な知識の提供が重要な要因となることが強く失された。
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