研究課題
各群10匹の雌雄のHartleyモルモットを使用した。Tangらの方法(J Occup Health, 2007)を参考にし、OECDのガイドラインに従い、トリクロロエチレン(TRI)とその代謝物トリクロロエタノール(TCE)およびトリクロロ酢酸(TCA)のマキシミゼーションテストを行った。TRIの感作率は雄70%、雌90%、TCAは雄10%、雌0%、TCEは雄20%、雌50%であった。感作性の原因(抗原)を明らかにするため、平成25年度はトリクロロエチレンによる感作性動物の肝臓のCYP2E1蛋白をSDS-PAGE法で測定した。感作性動物と非感作性動物の間には発現量の差は認められなかった。次に、Blue Native-PAGE法で電気泳動を行い、ゲルを染色した。50~60kDaに感作性動物特異的バンドがみられたので、プロテオミクス解析を行った。しかし、感作性動物特異的たんぱく質は検出できなかった。ここで方針を若干変更し、検出しようとする抗原は血中にあると仮定し、血清を用いて、CYP2E1による免疫沈処理を行い、その後電気泳動(SDS-PAGE)を行って、ゲルをSYPRO Rubyで染色して、Trans-illuminatorで可視化、撮影した。感作性動物では25kDa、27kDaおよび50kDaの蛋白が増加していることが判明した。50kDaはCYP2E1が想定されるが、血清における増加は報告されていない。27kDaは感作性動物においてのみ検出された。25kDaは曝露動物にも観察されるが、感作動物の方が発現量が高かった。これら3つの分子量をもつタンパク質を同定するため、現在プロテオミクス解析中である。
2: おおむね順調に進展している
達成度は80%である。感作性・非感作性動物の肝臓を用いて、数回Blue Native PAGE法でタンパク質を、未変性のまま負に帯電させて泳動した。50~60kDの間に感作性動物と非感作性動物の間に発現量が異なる2つのバンドを切り出し、プロテオミクス解析を行った。しかし、感作性の差を説明する蛋白質を同定出来なかった。感作性物質は血流にのり、全身に分布し、皮膚炎を発症すると、視点を変え、血清のCYP2E1抗原蛋白の解析を行った。血清での発現は極めて微量と考え、免疫沈降法を使用した。対照として野生型マウスとCYP2E1欠損マウスの肝臓と血清を使用した。その結果、非感作動物では全く発現しないが、感作動物のみで新たに発現が観察されたのは27kDaの蛋白であった。これらの蛋白は野生型およびCYP2E1欠損マウスでは発現していなかった。現在この蛋白をプロテオミクス解析中である。この結果が出たら、抗体を作成する予定で、これが達成できていない20%の部分であり、繰越が発生した。
1)現在プロテロミクスで感作性動物のみ、あるいは、この動物に多い蛋白を解析している。2)本来の計画に基づく研究:作成した抗体を用いて、Hypersensitivity syndromeの患者24名の血清と性・年齢をマッチさせたトリクロロエチレン曝露対照者24名の血清をSDS-PAGE電気泳動を行いWestern Blot法により作成した抗体を用いて、25kDa、27kDaあるいは50kDaの蛋白の定量を行う。CYP2E1はトリクロロエチレンの主な代謝酵素であるが、肝障害にも強く関連している。CYP2E1の主な局在は肝臓ミクロソームである。しかし、細胞の表面にも少量ではあるが発現している。CYP蛋白は自身の触媒作用により生成した化学物質の活性代謝物と付加物を作成する場合がある。化学物質との付加物の生成はP450等の薬物代謝酵素の免疫原性を増大させ、変性蛋白に対する自己抗体の産生をプロモートすると解されている。これらのことから、仮説のCYP2E1-TRI代謝物の複合体にCYP2E1のエピトープがあれば、抗CYP2E1で認識される蛋白が検出されるはずである。
繰越金1,123,345円。抗原蛋白の同定に時間がかかった。その為抗体作成の依頼が遅れた。現在25kDa、27kDaおよび50kDaの蛋白をゲルから抽出し、プロテオミクス解析中である。蛋白が同定できた場合、それぞれの蛋白の抗体を作成(企業に依頼)する。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) 図書 (1件)
Journal of Dermatological Science
巻: 72(3) ページ: 218-224
10.1016/j.jdermsci.2013.07.003
Journal of Occupational Health
巻: 55 ページ: 443-449
10.3136/joh.55.443