研究実績の概要 |
「ヒ素中毒の予防と治療法の開発」と「ゲノム機能学的責任遺伝子探索法の確立」を目的に、ジーントラップ挿入変異細胞ライブラリーを用いたヒ素感受性関連遺伝子群の探索とその機能解析に取り組んだ。1年間の研究期間延長では、コンピューターを用いた候補遺伝子情報の解析と、「真の責任遺伝子」であることの証明のための遺伝子ノックダウン実験の準備を進めた。 1.ヒ素感受性低下(耐性)変異細胞の単離と責任遺伝子の解明:これまでに、ジーントラップ挿入変異CHO細胞ライブラリー(Nobukuni et al., JBC, 2005)の三酸化ヒ素処理(40μM, 3~4 hr)でも生き残ったヒ素感受性低下変異細胞34クローンの解析(ジーントラップ法で生じたキメラRNAの内因性遺伝子部分を5’RACE法で増幅後塩基配列を決定後、その配列のBLAST検索)から、トラップされた遺伝子11個(P450関連遺伝子1個、シグナル伝達関連遺伝子1個、蛋白合成関連遺伝子2個、がん関連遺伝子1個、機能未同定遺伝子6個)を同定した。その中のP450関連遺伝子について、miRNAを用いた遺伝子ノックダウン細胞を作製し検討を進め、P450酵素系がヒ素感受性を決定する因子の一つであることを確認した。また、発がんとも関与するWnt/カテニンシ-グナル伝達経路構成成分の1つが三酸化ヒ素感受性に関連していることを明らかにした。本年度は更に、上記機能未同定遺伝子のノックダウン実験の準備を進めた。 2.ジーントラップ挿入変異細胞ライブラリーを用いた遺伝子探索でこれまで取り組んできたジフテリア毒素感受性、抗腫瘍活性物質Agelastatin感受性、ならびに細胞内コレステロール代謝輸送に関与する候補責任遺伝子群の情報検索と比較検討から、それぞれの薬毒物に対する感受性の決定には異なる遺伝子群が関与していることを明らかにした。
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