研究概要 |
本研究では、ガスクロマトグラフ/質量分析計(GC/MS)による、生体試料中ヒ素化合物(ヒ酸、亜ヒ酸、メチルアルシン酸)の同定・定量分析に至るまでのハイスループット分析法の開発を目的とするが、本年度は、前処理の最適条件を確立するために、以下4項目を検討した。対象とするヒ素化合物は、食餌の影響を受け難く、モニタリングに適しているとされている3種類のヒ素化合物(亜ヒ酸、ヒ酸、メチルアルソン酸)とした。 1)誘導体化剤の検討:誘導体化剤として、チオグリコール酸メチル、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2,3-ジチオ-1-プロパノール(BAL)などのSH基誘導体化剤を検討したが、GC/MSでの検出にはBALが適していた。 2)誘導体の構造解析:本研究で検出されたBAL誘導体が、既報で報告されているマススペクトルと異なったことから誘導体を単離し、NMRなどでの構造推定を行った。これまでは、ヒ素化合物とBALとの反応生成物は、1,3-dithia-2-arsacyclopentaneの5員環構造をとるとされていたが、本研究で得られた生成物は1,3-dithia-2-arsacyclohexaneの6員環構造であることが示唆された。そこで、1,3-ジチオ-2-プロパノールを誘導体化剤として使用し、構造確認を行っている。 3)還元剤の検討:ヨウ化カリウムなどの無機系還元剤、アスコルビン酸などの有機系還元剤を中心に検討を行ったが、5価のヒ素を3価に還元するには、塩化スズ+塩酸(0.5%)とヨウ化カリウム(20%)を溶液で添加する方法が適しており、操作上も簡便であった。 4)抽出溶剤の検討:ヘキサン、酢酸エチルなど一般的に使用される溶剤を検証した結果、ベンゼン、トルエン、ジクロロメタンで良好な回収率が得られたため、毒性や溶剤分取の操作性などを考慮して抽出溶剤はジクロロメタンとした。
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