近年、防疫用有機リン(OP)殺虫剤の直接(散布作業者)および間接的な曝露(消毒後の屋内施設の利用者など)による健康影響についての評価研究が行われている。その中で、OP殺虫剤による精子毒性に関する研究が多数報告されているが、その毒性発現機序については未だ解明されていない。本研究では、OP型ケミカルプローブを用いて、OP殺虫剤が潜在的に作用し得る雄性生殖器内の標的部位として脂肪酸アミド加水分解酵素(FAAH)を同定した。さらにFAAHのOP剤による機能阻害により、FAAHの内因性基質アナンダミドのレベルが上昇することで精子の運動能低下や奇形率上昇が起こるという新しい仮説を提唱するに至った。
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