研究課題
ベトナムのダイオキシン汚染地域に在住する3歳児153名について、ベーリー乳幼児脳神経発達尺度や自閉症尺度ASRSを用いて検診を行い、脳神経発達、特にコミュニケーション能力や社会情動発達の遅れの有無を検討した。その結果、その母乳中の四塩化ダイオキシン(TCDD)が高かった群(男児5名、女児10名のASRS得点が、TCDDが低いが年齢と家庭環境や社会経済状況の一致した同数の低暴露群と比べて高いことが明らかとなった。このことから、高TCDDは自閉症傾向にあることが考えられたため、以下、この2群を高TCDD自閉症群、低TCDD健常群と呼び、GC/MSにより尿メタボローム解析を行い、脂肪酸やアミノ酸などの400余りの尿代謝物の同時測定を行った結果を比較した。その際、統計ソフトSIPCA-P+を用いて、高TCDD自閉症群と低TCDD健常群とを判別するのに有用なバイオマーカーを見出すことを目標にS-プロット解析を行って、TCDD暴露による生体の代謝反応を捉えることを試みた。その結果、尿中リジニン、ヒスチヂン、トリプトファンといったアミノ酸濃度が高TCDD自閉症群で高く、低TCDD健常群との判別に有用な指標であることが明らかとなった。また、TCDDの高度な汚染が認められるビエンホア市の元米軍基地周辺地区で、新たなコホートを立ち上げ、出生時データや1か月時の母乳採取を終え、6か月検診時に尿採取を行なった。尿中のこれらの3種のアミノ酸を液体クロマトグライーにより測定したが、現時点では、ダイオキシンとこれらのアミノ酸との関係は不明である。また、非汚染地域であるハノイ市でも新たな新生児コホートを立ち上げるたが、調査開始が遅れたため、6カ月児検診をするまでに至っていないため、ベトナムの健常児における尿中のリジニン、ヒスチヂン、トリプトファン濃度については不明である。
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