研究課題
ウェルシュ菌は食中毒の原因菌であり、その病原因子としてClostridium perfringens enterotoxin (CPE)が食中毒の発生に必須と考えられていた。ところが、我々はCPE非産生性ウェルシュ菌が原因菌と強く疑われる食中毒を2事例経験した。本研究において我々は事例分離株から新型エンテロトキシンを同定し、BEC (binary enterotoxin of C. perfringens)と命名した。分離株の培養上清はウサギ結紮腸管ループ試験およびサックリングマウス試験で液体貯留活性を示した。精製毒素とゲノムDNAの次世代シークエンス解析によって、BECはBECaとBECbで構成されることが分かった。becAB遺伝子はウェルシュ菌strain13が保有するpCP13に類似する54.5-kbのプラスミド状に位置していた。組換えBECb (rBECb) は単独でサックリングマウス試験において液体貯留活性を示した。rBECa は単独で液体貯留活性を示さず、rBECb と同時に接種したとき液体貯留活性を強めた。becB遺伝子欠損株では液体貯留活性は消失した。 rBECaは精製アクチンに対してADPリボシル化活性を示した。BECbが BECa を細胞内へ輸送することを直接確認できていないが、BECaとBECbを同時に接種したときにVero細胞の円形化を確認した。これらの結果からBECがCPEと異なる新規エンテロトキシンであり、BEC産生性ウェルシュ菌が人の下痢症の原因となることを示した。さらに、ほとんど同一のプラスミドが系統の異なるウェルシュ菌に存在していたことから、水平伝搬によってbecAB遺伝子を獲得したと考えられる。
すべて 2014
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Infection and Immunity
巻: 82 ページ: 999
doi: 10.1128/IAI.01759-14