研究概要 |
インフルエンザはそのウイルス学的特徴から抗原性が全く異なる新型インフルエンザの出現が起こり得ることが知られており、その出現により大きな社会的インパクトをもたらすことは2009年のパンデミックの経験からも記憶に新しい。パンデミック(H1N1)2009では、感染症モデルを利用した罹患者数の推定や感染性に関するパラメータの推定などがリアルタイムで行われ対策に大きく寄与した。 一方で多くが免疫を持っていないために急速に感染が拡大して大流行に至るという理論背景を持つ感染症モデルによって様々なインフルエンザ対策の評価がなされてきた。これまでのモデルでは世代における接触機会や頻度は均一であるという前提で検討されていたが、近年の研究では世代間での接触には違いがあり、これが地域の流行動態に影響する可能性が指摘されている(Mossong PLoS Med,2008)。 さらにベトナムにおける世代間の接触者調査では、家庭での接触率がヨーロッパでの先行研究よりも高いことが明らかになっており(Horby, PLoS One, 2011)、異なる文化や社会構造を持つ我が国でもこれまでの先行研究だけでは世代間の接触の違いが分からない事が考えられる。同世代の接触よりもわが国における世代間の接触頻度を明らかにする目的をもつ本研究では、平成24年度に広島市の2つの区に居住する人口を対象に、年齢毎に割り付けた350名に対しての接触調査が終了した。また同市内におけるインフルエンザ患者に関する情報収集を行ってきた。平成25年度はこれらのデータを元にわが国における年齢階層ごとの接触行列の構築を行うとともに、インフルエンザ感染モデルの構築を通してそれぞれの年齢層の流行動態における影響について研究を進めていく。
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