研究概要 |
遺伝学研究で用いられている大規模ゲノムデータ用血縁構造計測法を用いて、山形県高畠町で収集したサンプル集団約1,600人に関する60万のゲノムワイドSNPジェノタイプデータを解析した結果、20.2%の血縁構造を検出した。 その血縁構造化の影響を調べるために、血縁構造を除外した集団と、除外しない集団で、表現型(血圧)とリスク環境要因(飲酒暦、喫煙暦、BMI)の関連性に交絡因子として血縁構造化の影響はあるか詳細な重回帰分析を行った。 その結果、サンプルサイズ約1,000人、血縁構造の程度20.2%、集団の有病率25%、血縁者集団内の有病率26%、遺伝率14.3%、血縁構造を除外した集団内の有病率26%のケースで、両集団間で推定された回帰係数に違いはないことが示された(P-value=0.55)。一方で、遺伝率20%より大きい場合、交絡因子として血縁構造の影響は小さくないことを示した。 本研究によって、①対象とする全集団内の表現型(血圧)の有病率(25%, 40%, 50%)、②サンプルサイズ(1,000, 400, 500)、③血縁構造化の程度(20%, 40%, 50%)、④遺伝率(14%, 22%, 32%)、⑤血縁者集団内の有病率(26% fixed)、の観点で、血圧とリスク環境因子の関連性に交絡因子として血縁構造化の影響がどの程度あるか明らかにすることができた。これらのパラメータの大きさによっては、これまで環境因子を中心とした疫学研究で得られてきた結果を再検証する必要があることが示された。今後、表現型(血圧)と環境因子との関連解析を行う際は、上記5つの観点にもとづき、はじめに集団の血縁構造を計測し、近い血縁者を除外した対象集団で、表現型と環境因子との関連解析を行う必要がある。
|