現在の特定健診・特定保健指導は、生活習慣病予備軍としてのメタボリック症候群対策に主眼が置かれる一方、検診結果で「医療機関受診が望ましい(要医療)」と判定された糖尿病・高血圧・脂質異常者への対応は実施主体によって大きく異なり、有効な対策の樹立、効果の検証が遅れている。本研究は(1)保険者の有する健診・レセプト(診療報酬明細書)の突合データセットを開発し、コホート研究により生活習慣病の「要医療判定」者の頻度とその後の受診状況、その予測因子を解明する。(2)「健診要医療判定」かつ医療機関未受診者を対象に面接調査(個別・集団)を実施し、その心理的・行動的プロセスを解明する。複数の健康保険組合由来のレセプトと健診データの匿名化突合により、統合的なデータセットを構築して要医療判定者(糖尿病[空腹時血糖126mg/dl又はHbA1c6.5%以上かつ非服薬者]・高血圧[収縮期血圧140mmHgかつ/または拡張期血圧90mmHgかつ非服薬者]の頻度、その後の医療機関受診状況の記述的な解析を進めた。その結果、糖尿病の可能性のある健診受診者のうち、6か月以内に医療機関を受診したのは3割強、同様に高血圧に関しては3割以下であった。医療機関未受診の予測因子は、年齢が若いこと、血圧値・HbA1c値が受診勧奨の基準値を越えるが比較的低い値であることが得られた。健診受診者の特性を考慮した受診勧奨システム、健診後の受療行動も考慮した健診の評価・研究が望まれる(論文投稿・査読後修正中)。面接調査に関しては京都府A市の成人を対象に、検診受診とその後の医療機関受診について予備面接を行った。特に東日本大震災による東北地方からの避難者の方々(11人に面接調査を実施)は、住民票の移動の有無で健診受診機会が変わることが示され、予防含む保健医療の継続性の課題が指摘された(論文投稿準備中)。
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