研究課題/領域番号 |
24659325
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
森 満 札幌医科大学, 医学部, 教授 (50175634)
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研究分担者 |
九冨 五郎 札幌医科大学, 医学部, 講師 (10404625)
平田 公一 札幌医科大学, 医学部, 教授 (50136959)
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キーワード | 乳がん / 症例対照研究 / イソフラボン / エコール / インスリン / アディポネクチン |
研究概要 |
(目的)乳がんの罹患率は上昇傾向にあり、その予防がますます重要になっている。そこで、乳がんのリスク要因や予防要因を疫学的研究によって明らかにする必要がある。(方法)症例対照研究のデザインによって、札幌医科大学附属病院を受診中の63人の乳がん患者と76人の非がん患者のイソフラボン類(Daizein、Genistein、Glycitein、Equol)の血中濃度、高分子量Adiponectin、および、Insulinの血中濃度を比較した。(結果)高分子量Adiponectinの血中濃度が高いほど、乳がん罹患リスクが有意に低かった。条件なしのロジスティック回帰分析によって、年齢、年齢初経、BMI、喫煙状況、飲酒状況を調整した上での高分子量Adiponectinの血中濃度が高いことのオッズ比(95%信頼区間)は0.09 (0.03-0.33)であった。この関連性は、特に、閉経後発症の乳がんにおいて顕著であり、そのオッズ比(95%信頼区間)は0.06 (0.01-0.28)であった。(考察)Adiponectinは抗動脈硬化作用、抗耐糖能異常作用、抗炎症作用などを有することが示されている。また、脂肪細胞が増加すると、Adiponectinの血中濃度が低下し、エストロゲンの血中濃度が上昇することから、乳がんのリスクが高くなる。従って、Adiponectinの血中濃度の上昇と関連する生活習慣要因・宿主要因を明らかにしていくことが、乳がんの予防につながると考えられる。(結語)高分子量Adiponectinの血中濃度が高いことが乳がん罹患リスクの低下と関連することが示唆されたが、腸内細菌叢中のナッツ菌によって産生されるEquolと乳がん罹患リスクとの関連性はみられなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高分子量Adiponectinの血中濃度が高いことが乳がん罹患リスクの低下と関連することが示唆されたが、腸内細菌叢中のナッツ菌によって産生されるEquolと乳がん罹患リスクとの関連性はみられなかった。従って、Adiponectinの血中濃度の上昇と関連する生活習慣要因・宿主要因を明らかにしていくことが、乳がんの予防につながると考えられた。本研究は、2013年10月に乳がんの英文専門誌であるBreast Cancer誌(インパクトファクター1.352)に掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
現在さらに、研究の対象となる乳がん症例群と対照群の標本数を増やしているところであり、研究の最終年度に当たる平成26年度には、より検出力か高い解析法である条件付きロジスティック回帰分析によって新たに解析を行い、その結果を英文専門誌に投稿する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた理由は、この金額を平成26年度(最終年度)の研究計画に含めて、最終年度の研究を行うことの方が、より有用であると考えられたためである。 平成26年度の研究では、統計解析を実施し、また、英文専門誌へ投稿するための費用の一部として、交付決定額を活用する。
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