現在、我が国で行われている一般的な禁煙治療の主体は、禁煙補助薬の処方と患者が抱える禁煙困難要因に対する医師や看護師のアドバイスである。しかし医療提供側の問題として、指導内容や費やす時間の差が大きく、限られた時間内で一定の効果を得ることが難しいといった現状がある。一方、「リセット禁煙」は構造化されたシナリオの中に、禁煙を容易にする「気づき」を誘導する質問が埋め込まれた心理教育プログラムであり、自助教材などを用いることで禁煙への導入が容易になるとされている。昭和大学横浜市北部病院人間ドック受診者の喫煙状況は、平成21年調査(年間総受診者数1535名)にて男性24.4%、女性7.1%とJT全国調査平均よりは低値であるが相当数の喫煙者が受診しており、今回当人間ドック受診者のうち同意を得られた喫煙者を対象に、「リセット禁煙」のシナリオに基づいた自助教材の効果を評価することを目的に、無作為対照試験を実施した。 平成24年4月から平成25年3月までに本研究へ参加した者の内訳は総数26名、コントロール群13名(男性11名、女性2名、平均年齢53.3歳、平均喫煙指数498)、リセット群13名(男性12名、女性1名、平均年齢49.6歳、平均喫煙指数435)であった。その内6か月以上の経過観察が可能であった者は、コントロール群4名、リセット群5名であり、平成25年3月末時点で禁煙達成者はコントロール群で2名、リセット群で3名であった。また禁煙開始時期は、コントロール群では1名が1か月以内、1名が6か月以内であったが、リセット群では3名とも1か月以内に禁煙を開始していた。 リセット禁煙に基づいた自助教材による禁煙達成率の向上は、現時点では明らかではないが、指導直後の禁煙行動に結びつく可能性があり、今後更に症例を重ねて検討していく予定である。
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