昨年度、私達は心筋のmitochondria(Mt)にもCa2+依存的proteaseであるcalpainが存在し、虚血再灌流時に活性化することを見出した。そこで本年度はMt-calpainが関与した新しい心筋梗塞進展の分子機序を明らかにすることを目的に実験を行った。その結果、心筋Mtのmatrix画分にm-calpainが存在することを証明し、MtのCa2+過負荷や虚血再灌流によって活性化されることを確認した。活性化したMt-calpainはミトコンドリア呼吸鎖のComplex IのサブユニットであるND6を限定分解し、Complex Iを不活性化することにより、mitochondria permeability transition pore(mPTP)を開口し心筋梗塞進展に関与することを、calpain阻害剤を用いて明らかにした。これらの結果は細胞質calpainのみならずMt-calpainも心筋梗塞進展に重要な役割を果たしていることを示唆しており、心筋梗塞を評価する上で考慮すべき分子であることを意味している。
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