研究課題/領域番号 |
24659337
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
石井 晃 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30252175)
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研究分担者 |
服部 秀樹 愛知医科大学, 医学部, 准教授 (30107817)
小川 匡之 愛知医科大学, 医学部, 助教 (50559937)
財津 桂 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30700546)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 胆汁酸 / 質量分析 / 超高速液体クロマトグラフ / SHRSPラット |
研究概要 |
本年度は、まず、胆汁酸の分離条件の最適化を行った。これまで、本研究室で使用されてきた、UPLC-MS-MSシステムを用い、21種類の胆汁酸の分離を試みた。カラムは、Poroshell 120 EC-C8 (particle size 2.7 micrometer, 2.1 x 50 mm, Agilent)、カラム温度は 30℃、移動相は A (0.2 %ギ酸)、B (0.2 %含有アセトニトリル)を用い、グラジエントは 70 % A/30% B (0 min)から、62 % A/38 % B (2.6 min)へ、次いで 2 % A/98 % B (6 min)まで変化させ、流速は0.5 mL/min、ESIネガティブモードで測定した。 胆汁酸フリーのラット血清ないし肝臓をホモジナイズした上清に21種類の胆汁酸を添加し、血清の方はさらに0.5 Mリン酸バッファーpH6.0を加えた後、アセトニトリルを加え、液‐液抽出法により精製を行った。抽出した試料は乾固後、0.2 %ギ酸含有30 %アセトニトリルに再構成して測定を行った。 その結果、21種類全ての胆汁酸を5 min以内に分離することができた。検量線は0.25ないし7.5-5000 ng/gの範囲で良好な直線性を示し、検出限界は血清で0.25-7.5 ng/mL、肝臓で2.5-10 ng/gであった。また、ラットの血清及び肝臓中の胆汁酸の濃度の測定も可能であった。SHRSPラットに高脂肪食を摂取させたところ、血清及び肝臓サンプルにおいて、ウルソデオキシコール酸のタウリン抱合体の減少及び、幾つかの胆汁酸のグリシン抱合体の上昇が観察され、幾つかの胆汁酸の抱合体が高脂肪食による肝障害のバイオマーカーとなる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、ラット血清及び肝臓サンプルを用い、21種類の胆汁酸及びその抱合体を分離し、5分以内という短時間で同定・定量することに成功した。これは、今後施行されるヒトサンプルの分析のための基本的方法論が確立したことを示している。事実、SHRSPラットを用いた実験で、高脂肪食の摂取により、胆汁酸プロファイルの変化を観察することができ、このことも、本方法の有用性を示していると考えられる。今後はヒトサンプルにおける胆汁酸の分離及び同定・定量について、validationを行う必要がある。 ただし、胆汁酸は多数の種類があり、本方法でもその全てを分離することは困難である。また、胆汁酸の抱合体のうち、硫酸抱合体も胆汁酸代謝の評価のためには重要と考えられるものの、今回の移動相では、硫酸抱合体が分解する可能性もあり、より多数の胆汁酸の分析が必要な場合は、別の方法の開発も必要になる可能性が存在する。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、昨年度に開発された方法を用い、ヒトサンプルのvalidationを行う。ヒトサンプルは市販の血清試料を用い、内在性の胆汁酸を除去した後、既知の胆汁酸を添加してintraday, day-to-dayのvariationを測定し、方法の評価を行う。 今回の、UPLC-MS-MSを用いた胆汁酸の測定法は、5分以内で21種類の胆汁酸及びその抱合体が測定できるという点で、非常に優れたものである。しかしながら、上述したように、硫酸抱合体等、さらに測定できる胆汁酸及びその抱合体を増やすためには、今回の方法では十分でない可能性が存在する。そのため、昨年度に導入した、Q-TOF型のタンデム質量分析計を用いる、精密質量を測定することによる定量法の開発も同時に試みる。その際、移動相も、ギ酸系ではなく、酢酸アンモニウム系を再度試み、新しい担体のカラムの試行する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、機器を購入する予定は特になく、試薬、実験動物の購入に主にあてられる。また、研究成果の発表のための旅費にも使用する予定である。
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