研究課題/領域番号 |
24659337
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
石井 晃 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30252175)
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研究分担者 |
服部 秀樹 愛知医科大学, 医学部, 准教授 (30107817)
小川 匡之 愛知医科大学, 医学部, 助教 (50559937)
財津 桂 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30700546)
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キーワード | 質量分析 / タンデム質量分析 / 高速液体クロマトグラフィー / 固相抽出 / 胆汁酸 |
研究概要 |
本年度は、昨年度に確立した方法論を応用し、脳卒中易発症性高血圧自然発症ラットの亜系であるSHRSP5/Dmcr (Dmcr) ラットについて、高脂肪・高コレステロール飼料(HFC)による胆汁酸組成への影響を検討した。10週令のオスのDmcr ラットにHFCないし通常のSP飼料を与え、2、8、14週後の肝臓内の胆汁酸を測定した。HFC投与後2週後では、主要な胆汁酸はコール酸(CA)で、次いで、デオキシコール酸(DCA)、ケノデオキシコール酸(CDCA)であった。その後もCA及びCDCAが主要な胆汁酸であったものの、CAとDCAは、8ないし14週後に急減し、一方でCDCAは増加傾向にあった。CA/CDCA比は、対照群では4から6程度であるのに比べ、8及び14週のHFC群では概ね1程度であった。また、対照群と違い、水溶性の胆汁酸であるウルソデオキシコール酸(UDCA)はHFC群では少なかった。また、HFC群では、胆汁酸のタウリン抱合体が対照群と比して少ないのに反し、グリシン抱合体が大きく上昇していた。HFC投与群の肝障害や線維化と、CDCA類は正の相関があり、総CA/総CDCA比は負の相関があった。これらを総合すると、HFCによる肝障害では、CDCAとグリシン抱合体が重要な影響を果たしている可能性が示唆された。 現在は、胆汁酸分析系のより高精度かつ高再現性を有する分析系の構築を進めている。本分析系では、AB Sciex社の4000QTRAP型質量分析計を使用し、LC条件も、UPLCの場合と比べて緩やかなグラジエント条件を採用して、胆汁酸のより精密な分離を試みる。現時点ではコール酸、ケノデオキシコール酸、デオキシコール酸等の主要胆汁酸の遊離体、タウリンおよびグリシン各抱合体の質量分析条件の最適化(CEおよびDP等の最適化)を完了し、メタノール移動相による分離条件を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に開発したUPLC-MS-MSによる方法は、5分間という短時間で21種類の胆汁酸を検出・定量できる優れた方法であった。この方法により、本年度はSHRSP5/Dmcr ラットにおける高脂肪・高コレステロール食で誘導される肝障害と胆汁酸の組成や量の変化とに相関があることが示された。これは、当該方法の有用性が明らかに示されたといえる。 しかしながら、当該方法では一部の胆汁酸において、イオンサプレッションやイオンエンハンスメントというマトリックス効果が強く観察された。また、この方法ではまだ網羅されていない胆汁酸があるため、これらの問題を改善する必要があり、胆汁酸分析系のより高精度かつ高再現性を有する分析系の構築を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
上に述べたように、UPLC-MS-MSを用いた検出法は、ロバストネスとスループットネスという点では非常に有利であるといえる。一方で、一部の胆汁酸ではマトリックスエフェクトが著明に観察されたことから、スループットネスを若干犠牲にしても、より分離を精密にすることが必要であると考えられ、現在さらに精度の高い測定系を構築中である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度に使用する予定であった試薬の納品が遅れたため。 試薬は来年度に納入され、使用される予定である。
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