研究課題/領域番号 |
24659343
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
冲永 壯治 東北大学, 大学病院, 准教授 (30302136)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 東日本大地震 / 仮設住宅 / 高齢者 / コホート研究 |
研究概要 |
本研究の中心となるのはアンケート調査である。特に重要なことは、高齢者の心身の状況を多面的に抽出できる質と量がアンケート項目に備わっていることである。そのため研究協力者間で協議を重ね、14ページ(A4サイズ)に渡るアンケート調査票を考案した。介護予防事業で用いられる基本チェックリストの他、日常生活動作、社会生活、うつ・アルコール依存、運動機能および転倒骨折リスク、サルコペニア(アンケート回収時に握力を測定する)等の項目を含む。また、第一回のアンケート調査で同意を得た高齢者が、その後の調査の母集団となって前向きコホート研究となるため、アンケート内容は高齢者でも抵抗なく研究に参加できる体裁となっている。 本研究では1.アンケート調査による高齢者総合機能評価に加え、2.タッチパネルを用いた認知機能調査、3.集団検診のデータ収集、4.医療機関受診記録の収集を実施することにとし、研究計画書を作成した。これを以て東北大学倫理委員会に提出し、承認を得ることができた。 認知機能の診断に用いる心理検査はMMSE等であるが、その結果は検査者や周囲の環境に大きく左右される。本研究では1.スクリーニングに重点を置きたい、2.検査条件を均一にしたいため、タッチパネルを用いいた検査機器を採用した。利点は、短時間で済むこと、ヘッドホンを用いているために被検者が集中して臨めることである。 本研究は東北大学加齢医学研究所と気仙沼市との共同事業として運営されるため、市との連携内容について事務レベルで協議を重ねてきた。特に個人情報の取り扱いに関して詳細に検討した。その結果、協定書締結に至り(平成25年2月28日)、その直後より対象者全てに事前案内状が気仙沼市と東北大学の連盟で郵送され、続いて第一回アンケート調査が開始された。アンケートの回答を得た仮設地区から順次、タッチパネルを用いた認知症検査も実行している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究をスタートするにあたり、最も時間を要したのは、気仙沼市(以下、市)と東北大学加齢医学研究所との間で取り交わす協定書締結のための協議であった。市は本研究の重要性を深く理解され、実施に向けて協力していただけたが、被災した市では多大な仕事をかかえており、市職員の絶対数が不足しているとともに、議会期間中はその仕事に集中せざるを得ない状況であった。一方本研究は、市が保有する個人情報(仮設住宅に住む65才以上の高齢者の住所、健診のデータ、医療受診・介護のデータ等)を必要とし、市はその各担当部署において本研究内容を細かく精査する必要があった。以上の理由により多大な時間を要したが、最終的には平成25年2月28日付で、気仙沼市長と東北大学加齢医学研所長との間で協定書が結ばれた。 本研究は3年というスパンの疫学調査であるが、敢えて市との共同事業とした理由は、気仙沼市の仮設住宅に住むすべての高齢者を母集団にしたいがためである。手上げ方式では母集団が少なく、またバイアスも懸念される。さらに、市の保有する個人情報をアンケート調査にリンクすることで、より精度の高い結果を得ることができる。市の協力を得て、なんとか研究初年度内に調査をスタートことができた。このことにより、今後の足掛け3年間、3度の調査を繰り返し実施することが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は3年に渡る前向きコホート研究であり、その間に3回の調査を行う。第一回の調査が終了した時点で、cross-sectional なデータとしてまとめる予定である。仮設在住高齢者が置かれている現在の状況と傾向を把握する。また、解決するべきき喫緊の課題がないか検討する。さらに、個人レベルで介入すべき事象があれば(例:重度のうつ、明らかなアルコール依存などといった放置できない状況が容易に推測された場合など)、地域包括センター等と連携してその個人にアドバイスする。 第一回アンケート調査を開始したが、本研究を完遂するにためには、仮設在住高齢者を取り巻く人や組織と緊密に連携することがkeyであることが判明した。高齢者の家族、仮設地区の自治会長、地域包括センターに関与する団体、県保健所と良い関係を持ち続けることが肝要である。研究を推進させていくためには足を運び、常にコンタクトをとることを心掛ける。 第二回のアンケート調査を平成25年度内に完遂させる。第一回の調査で本研究への参加同意を得た高齢者を対象とする。この時も握力計を用いてサルコペニアの指標とし、またタッチパネルを用いた認知症検査も後日行う。アンケート調査のデータが出次第、2回の調査結果を比較し、有意な変化となっている項目をスクリーニングする。特に、看過できぬ悪化、増悪が推定される事象に関しては、気仙沼市と協議の上、対策を講じる。 検診データ、医療機関受診データ、介護データに関しては、各々保存している関係機関に諮って収集できるよう下地を構築する。このデータ収集は第三回アンケート調査後に必要となるが、時間が限られているため、遅滞無く実施できるように準備を進めて行く。 本研究の中間解析が出た時点で、気仙沼市に分かりやすく提示する機会を設ける。市からの要望があれば、可能な限り応えることとし、研究の成果物を市に還元することを心掛ける。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、当初計画していた第一回アンケート調査の開始が上述の通り遅れた経緯があって生じたものである。そのため平成24年度内に第一回アンケート調査を完遂できず、次年度にまたがる結果となった。このため、アンケート調査に関しては、第一回と第二回アンケート調査を合わせて平成25年度請求とする予定である。また、第一回アンケート調査後に行う予定であった、データのファイル化と解析、自治体への報告などの諸費用も平成25年度請求額に合わせる予定である。
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