研究実績の概要 |
【目的】仮設住宅在住高齢者の転居前の生活環境は様々である。宮城県気仙沼市の中心部では漁業を中心とした産業が盛んであった。遠洋からの水揚げを加工・保存する二次産業、それを卸売・流通させる三次産業が市街地に展開していた。一方、気仙沼市南部の本吉町、北部の唐桑半島と気仙沼大島では沿岸漁業や養殖業といった一時産業が根付いていた。このような生活背景と長期化する仮設生活下の健康被害との関係を明らかにして疾病予防の手立てを考察する。【方法】気仙沼市が設置した仮設を地域別に、中心部の(a)市街地区、その近隣の(b)本吉地区、(c)唐桑・大島地区、(d)岩手県地区の4分類とした。これらの仮設に住むすべての高齢者2,150名に対してアンケート調査を行った。アンケート内容は高齢者の健康・生活機能を総合的に評価する内容とした。【結果】アンケートの回収率は73%であった。(a)~(d)地区において一様にみられた現象は、体調不良、体重減少、喫煙量・アルコール摂取量の増加、睡眠障害、活動性の低下など多岐に渡った。心理的ストレスをK6にて評価した。対照群を欠くものの、一般的同世代高齢者に比べてスコアが高い傾向であった。地区別にみると(c)地区においてスコアが低い傾向で、ついて(b)(a)(d)地区の順であった。半島・島嶼の(c)地区では交通の利便性が低く、近隣相互の助け合いが浸透していた。ソーシャルキャピタルとも言うべきこの習慣が、仮設生活でも助け合いや見守りといった形で機能している様子が伺われた。【結語】仮設在住高齢者の健康・生活機能評価において、仮設設置の地区間で異なる傾向が一部の調査項目で観察された。さらに分析を進め、仮設ないし災害公営住宅在住高齢者のQOL維持向上を目指した介護予防プログラムの策定につなげる予定である。
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