研究課題/領域番号 |
24659344
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
福土 審 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80199249)
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キーワード | 脳腸相関 / 過敏性腸症候群 / バイオマーカー / 消化管知覚 / 消化管運動 / 遺伝子 / 炎症 / ストレス |
研究概要 |
過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome; IBS)はストレス関連性の身体疾患、即ち、心身症のモデル疾患とも言うべき疾患である。IBSにおいてはcorticotropin-releasing hormone (CRH)が重要な役割を持つ。CRHの作用は昨年度報告したCRH-R1の他に、CRH、CRH binding protein (CRH-BP)の発現量によって左右される。それらがIBSの表現形に関連するという仮説を検証した。当該物質のgenotypingが可能であったIBS 111例を対象とし、健常者156例を対照とした。採血し、白血球を分離し、DNAを抽出した。CRH遺伝子rs6472258、rs28364015、CRH-BP遺伝子rs10474485を標的とし、real-time polymerase chain reactionでgenotypingを行い、direct sequenceにて補足した。IBSの表現形は、IBS subtype、Perceived-Stress Scale (PSS)、Self-rating Depression Scale (SDS)、State-Trait Anxiety Inventory (STAI)で定量化した。結果は、rs28364015は最初の40例全例がTTであり、minor alleleを持つ個体はなかった。rs6472258とrs10474485はいずれもIBS、IBS subtypeとの直接の関連はなかった。しかし、rs6472258のG alleleを持たない個体のSDS(p = 0.023)、ならびに、rs10474485のA alleleを持たない個体のPSS (p = 0.014)が高値であった。CRH、CRH-BP遺伝子多型はIBSの陰性情動に関連することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は堅調に進んでおり、仮説が証明されてきている。論文が専門誌に掲載されるだけでなく、本研究には社会的な関心が寄せられ、その実、研究成果を公開市民講座にて発信し、一般市民と討議を行うことで、繰り返し社会に還元した。社会に対する研究費使用の説明責任を十分に果たしていると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
現在の速度で研究を進めて行けば、目標を十分に達成できるものと見込んでいる。IBSのエンドフェノタイプと関連遺伝子の解析を進めて行くことにより、効率良くストレス下の生体内の健康維持機構とその破綻の端緒を把握し、これを種々の関連疾患に応用することが可能になると見込んでいる。
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