研究課題
ストレス病の克服は現代社会における非常に大きな課題である。過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome; IBS)はその最も好適な疾患である。研究代表者は、特定の遺伝子型が環境の変化に特に反応する遺伝子-環境相関の機序がIBSの鍵である仮説を提唱している。IBSの原因遺伝子が欧米で鋭意追究されており、最近、スウェーデンのIBS 534例対対照4932例のgenome wide association study (GWAS)により、第7染色体短腕22.1におけるKDEL endoplasmic reticulum protein retention receptor 2 (KDELR2)ならびにglutamate receptor, ionotropic, delta 2 (Grid2) interacting protein (GRID2IP)遺伝子の変異が見出され、欧米6ヶ国のコホートにおいても再現性が確認されている。しかし、日本におけるIBSのゲノム研究は少ない。平成26年度は、対象をIBS患者(n = 150)、健常者(n = 1000)として、サンプル数を増加させた。方法は、静脈採血により、genotypeと生物学的endophenotypeを同定した。Genotypingは、血液検体から白血球を分離し、DNAを抽出する。これより、5-HTTLPR、5-HT3受容体遺伝子、一酸化窒素合成酵素(NOS)、CRH遺伝子、CRH受容体R1遺伝子、CRH受容体R2遺伝子を代表とする遺伝子多型をGWASにて分析した。そのゲノムの第一の分析が終了し、結果を得た。臨床的に意味がある変異の有無を解析することを可能な状態にした。IBSの本格的GWASは前述したスウェーデンならびに欧米6ヶ国のKDELR2ならびにGRID2IP遺伝子、さらにはTNFSF15遺伝子以外は実施されておらず、人種差の有無も含めた解析に大きな意義がある。6ヶ国の標本数は154例-1408例と幅があり、ギリシャが154検体と少ないが、統計学的には有意な差を検出している。日本におけるKDELR2、GRID2IP、TNFSF15遺伝子の再現性の肯定もしくは否定だけに限定しても解析には大きな意義がある。
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J Gastroenterol
巻: 50 ページ: 11-30
10.1007/s00535-014-1017-0
http://www.hosp.tohoku.ac.jp/sinryou/s8_sinryou.html