研究課題/領域番号 |
24659345
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
庄司 知隆 東北大学, 大学病院, 助教 (40360870)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 機能性ディスペプシア / Visceral Sensitivity / Brain Connectivity / structural MRI / Barostat / stress / 機能性消化管消化管障害 |
研究実績の概要 |
本研究はヒトの消化管知覚の神経生理学的メカニズムを最新の消化管運動知覚機能検査とMRI構造画像を用いて明らかにすることであり、胃知覚過敏性と脳の機能的および解剖学的構造との関連を横断的に調査するものである。さらに、心理ストレス負荷実験を行い、ストレスに対する胃知覚機能の反応強度と脳の機能的構造と関連を明らかにする。本研究は横断的調査であるため、胃知覚過敏と脳構造の因果関係を証明する基礎調査に相当する。 本実施年度では実験の遂行および関連領域の情報のupdateを行った。最新の関連論文では、内臓知覚を発現しやすい脳機能変化が先に存在し、消化管感染症あるいはストレスが慢性的な内臓知覚過敏を誘発する可能性が報告されている。これらの報告を元に、本研究の論理的仮説を修正して再構築した。すなわち、「内臓知覚過敏およびストレス過敏性の両方に共通する特異的脳構造(ネットワーク)の存在を明らかにする」とし、内臓知覚過敏を誘発されやすい脳の構造的素因を探索することが現実的と考えられた。この点について脳機能構造画像の専門家と討議し、仮説の証明を得るための脳画像撮像内容およびシークエンスならびに被験者数についてプロトコールの修正を行った。脳画像は、脳解剖学的構造(主に灰白質)と脳領域間結合(白質)を撮像することとし、背景処理画像の撮像を含めて、1人あたり40分間の検査所要時間で、1回の実施人数は4人程度と算出された。被験者人数は、統計学的有意判定の検出力より算出し、健常者32人、機能性ディスペプシア32人に修正した。被験者はMRI撮像と胃機能検査(所要時間約3時間)を別日に施行される。 本実施年度に上記修正を行い、検査時間枠と被験者の都合の関係で募集されたが検査の施行されなかった対象者が多く存在したものの、健常者7名、機能性ディスペプシア2名にMRIを施行し、検査の施行はトラブルなく遂行された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
今年度は、被験者検査を終了させ、データ集計および解析、学会発表ならびに専門誌上に論文発表を行う計画であったが、被験者検査の進行に遅れが生じたため研究が遅れている。検査の進行の遅れの要因を分析した。 第一に、胃機能検査機器の故障である。胃内に挿入するバロスタットバッグの破損により修復に時間を要した。体内に使用するカテーテル先端に装着するバッグであり、海外製品のためその修復の方法と対応を含め時間を要した。第二に、ストレス負荷装置の老朽化により代替品の調達が必要となった。その代替製品の選定および購入にいくらか手続きが必要であった。第三に、脳構造画像測定のスケジュール枠の数が少ないことであった。利用施設には競合する他の研究も同時に行われているため、時期によっては検査枠の割り当て数が減少することがあった。第四に、被験者の募集で集まった人数にばらつきがあった。検査枠の少ない時に多く、またその逆のケースが見受けられた。被験者の時間の都合によって検査を受けることができなかったものが多く存在した。これらの要因が年度内に時間を異にして出現し、その都度対応して検査を進め、検査実数の進捗率は約14%である。 現時これらの要因の第一、二は解決済みである。検査枠は常に限度があるが、次年度を通じて万遍なく検査を施行可能となる見込みである。被験者の検査導入調整は被験者の都合に依存するため完全なコントロールは困難であるが、年度を通じて募集を行うことで、導入できなかった分を随時補填することで検査欠損が生じないようする。
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今後の研究の推進方策 |
遅延要因は、①胃機能検査備品の破損と修理、②ストレス負荷装置の老朽化故障による代替品の調達、③検査施設の利用枠の限度、④被験者の都合、であった。 現時これらの要因の第一、二は解決済みである。胃機能検査用カテーテルは精密機器の一部であり、また消耗品であるため、破損および修理は常に必要となる。また、被験者ごとに殺菌消毒を行うため、検査の施行には一定の間隔が必要となり、これも律速の要因となっているが、検査枠の拡充で対応する。検査枠は常に限度があるが、次年度を通じて万遍なく検査を施行可能となる見込みである。検査施行枠については、検査施設が混み合う年度末を避けて、年度初めから年末にかけて随時に検査を施行することによって利用枠を確保することができる。週1回の利用枠の確保で月最大16名、4ヶ月で終了することが見込まれるが、胃機能検査の進行、機器の調整および被験者の都合要因などを考慮して、倍の8ヶ月を準備することで対応する。被験者の都合については、被験者の検査導入調整は被験者の都合に依存するため完全なコントロールは困難であるが、年度を通じて募集を行うことで、検査導入に至らなかった分を随時補填することで検査欠損が生じないようする。 これらの対策を推進させるため、様々な準備を行っている。胃機能検査用カテーテルの予備部品を準備し、2回分の修復に対応可能とした。利用枠は週1回の利用を申請し、承認される見込みである。募集は、施設内掲示板に掲示し、常時募集を行う。長期休業期間に検査導入数の増加が見込まれる。 想定される問題について対策を立て、一部はすでに実施している。次年度に適正かつ計画的に運用する準備ができている。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、被験者検査を施行し、データ集計および解析、学会発表ならびに専門誌上に論文発表を行う計画であったが、被験者検査数が少なかったことにより謝金の支払いが当初の予定より減少し、次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、被験者検査を継続的に遂行し、主に謝金支払いで使用する計画である。謝金はMRI検査参加および胃機能検査の両方にそれぞれ支払われ、検査施行されたものから順次謝金として利用する。また、検査に使用される消耗品の購入、調査旅費および成果報告費に使用を予定する。被験者単価と施行予定人数による謝金で1,200,000円および消耗品代、調査旅費および成果報告費で300,000円を予定し、次年度使用額と収支を合わせている。
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