研究概要 |
超高齢化を迎える現在社会においてアルツハイマー病(AD)は解決の待たれる疾患であり、食事の欧米化に伴い、糖尿病が増加している。疫学的調査により、糖尿病がADの発症危険因子であることが支持されている。しかし、その機序は判明しておらず、我々は機序解明を目指して糖尿病合併ADモデルマウスを作成した。その結果、糖尿病がADの病態を悪化させることが確認されたが、興味深いことにADが糖尿病を悪化させる可能性を突き止めた。そこで本研究においては、Tet-offのシステムを用いて、脳内ベータ・アミロイド量をコントロールし、ADが糖尿病を悪化させる機序を明らかにすべく研究を行っている。本年度は Tet-offのvector (ROSAtTA)にAmyloid Precursor Protein (APP)swedish変異を導入したコンストラクトを作成した。 さらに我々はAD患者において75g OGTT試験の糖負荷後に血中βアミロイドの変動パターンが非AD患者と異なることを示した(Takeda, Sato, et al. Dementia and Geriatric Cognitive Disorders, 2012)。そこで短期的のみならず、長期的な高脂肪食負荷で血中βアミロイド値が変動するかを明らかにすることを目的としADモデルであるAPP/PS1マウスに6か月間の高脂肪食を負荷し、血中ベータ・アミロイド40および42の値をELISAにて測定を行った。その結果、APP/PS1マウスにおいて6か月の高脂肪食負荷は通常食に比し、血中ベータ・アミロイド40および42をともに増加させることが判明した。本年度の研究により長期的な高脂肪食負荷によっても血中ベータ・アミロイドが増加し得ることを示し、このことがADと糖尿病の相互病態修飾の機序の一因子である可能性を示唆することができた。
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