研究課題/領域番号 |
24659350
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
須藤 信行 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60304812)
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研究分担者 |
古賀 泰裕 東海大学, 医学部, 教授 (60170221)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | カテコラミン / 腸内細菌 / 腸管 |
研究概要 |
近年、“Interkingdom signaling(IKS)” の存在が発見され、研究者の注目を集めている。IKSとは、本来は細菌間の情報伝達に使われていた物質が、「界」を越えてその宿主へ作用し、逆に宿主由来の物質が細菌へ作用しその性質を変化させるという細菌界と動物界との双方向的な情報伝達を指す概念である。代表的ストレス関連ホルモンであるカテコラミンは、その情報伝達を仲介する分子の一つと考えられている。カテコラミンを介したIKSは、腸管内で恒常的に行われていると推定されているが、これまでin vivoで明確に証明した報告はない。その最大の理由は、多数の夾雑物の影響で腸管管腔内のカテコラミン測定が技術的に困難であることによる。そこで血液中のカテコラミン検出に用いられているジフェニルエチレンジアミン (DPE)法による測定を試みた。その手法の概要は、水溶性物質および陰イオン性物質をプレカラムで除去した後、分離カラム(陽イオン交換樹脂)で分離し、ジフェニルエチレンジアミン (DPE)、フェリシアン化カリウムにより生成した蛍光物質を測定するというものである。 本法を用いたところ、十分な信頼性、再現性を持って盲腸内容物、糞便中のカテコラミンを測定できた。通常の腸内細菌叢を有するSPFマウスの盲腸内容物、糞便中濃度を測定したところ、腸管内にはドーパミン、ノルエピネフリンが豊富に存在していることが明らかとなった。一方、無菌マウスの管腔内カテコラミン濃度は、SPFマウスのそれより著しく低値であった。以上の結果は、腸管管腔内カテコラミンの産生に腸内細菌が深く関与している可能性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画通り、腸管内におけるカテコラミンの測定系を確立するとともにその産生には腸内細菌由来のbeta-glucuronidaseによる脱包合が関与していることを明らかにした。具体的には、beta-glucuronidase活性を持つ大腸菌とbeta-glucuronidase活性を欠損した大腸菌変異株のそれぞれ単一細菌から構成された人工菌叢マウスを作成し、その腸管内でのカテコラミン濃度を比較した。その結果、beta-glucuronidase活性を欠損した大腸菌変異株では無菌マウスと同様に遊離型カテコラミン濃度が著しく低値であり、大半のカテコラミンは生理活性を有しない包合型として存在していた。以上の結果をAm J Physiol Gastrointest Liver Physiol誌に報告したが、F1000に注目論文として取りあげられるなど(In F1000Prime, 01 Feb 2013; DOI: 10.3410/f.717972997.793469811)海外研究者からの注目も高い。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、腸管管腔内に存在するカテコラミンが如何なる生理機能に関与しているかについて検討を進めていく。具体的には、腸管ループモデルを用いて、カテコラミンが腸管での水分および電解質吸収への影響およびそのメカニズムについて検討する。またClostridiumのToxin Aによる腸管炎症モデルにおいて管腔内カテコラミンによる腸管上皮保護作用について検討したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
既存のHPLC器機のカラムおよびフィルター交換に使用する。加えて、新たにカテコラミン代謝産物測定のための新規システム購入に使用する予定である。
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